毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第23話(idea 2021年2月号掲載)
「役のなり手不足」は、地域運営の大きな課題です。そもそも地域に人がいないという人口減少も進行していますが、どの地域もまだ住んでいる人はいます。「特にも若い人が役をやりたがらない」という現役の役職者の嘆きの声も聴きますが、果たしてその真意はいかに?
地域内で選任する役割・役職は、自治会長、行政区長、民生児童委員、保健推進委員、防犯協会、地区体協など、多岐にわたります。一つ一つの役割の目的を探れば「地域で安心に暮らすため」に必要なことなのですが、最近では、重任や掛け持ちをせざるを得ず、「一度役を受けたら終身刑」というイメージが強くなっています。そのイメージが先行し、「役を受けたら大変だからやりたくない」「なるべく役を受けないように」と家族内合意をするという家も。これでは地域の将来が不安でなりません。
当センターでは、様々なワークショップ(話し合いの場)を通じて、若者の意見を聴く機会があります。その中で「自分の住む地域の運営に興味があるか」と問いかけてみることもありますが、なんと、若者たちは「興味がある」「自分にできることがあるなら関わりたい」という答えをくれるのです。
素直に嬉しいと思うのもつかの間、若者たちからは、次の言葉が続きます。
「実際には何に参加したらいいか分かりません」
「どうやって参加したらいいか分かりません」
「今の地域に私が関われることってあるのですか?」
令和2年開催
後期総合計画策定市民ワークショップ(無作為抽出により若い世代も参加)
令和2年開催
議員と大学生のオンライン懇談会
(議員が現役大学生の生の声を聴く機会の進行役を担当)
若者参加のカギは「迎える側の丁寧さ」にあり!
上述の若者たちの言葉は、昨今の地域コミュニティにおける重要な課題ではないかと考え、勝手ながらその原因を以下のように推測します。
若者が参加してこない原因① 地域(住民情報)の把握ができていない
「どこかの息子や娘が帰ってきたようだと噂は聞くが、実際にはどこの家のことなのか分からない」「若者が住んでいることは知っているが、どこに仕事に行き、どういう暮らしぶりなのか分からない」と、役員をやっている人たちでも、集落内はもちろん、班内の住民情報すら把握できていないことが……。もちろん個人情報に触れることもあり、気を使う部分ではありますが、把握できていなければ声をかけることはできません。
若者が参加してこない原因② 「知っているだろう」という思い込み・前提
地域内の情報伝達手段として、回覧板や自治会報などがありますが、限られた紙面に内容を詰め込むため、概要に留まり、詳細が掲載されないことも多々。情報を発信する立場からしたら「地域住民なら省略してもわかるだろう」という認識で書いているかもしれませんが、この「知っているだろう」の見込み発信によって、情報が正しく伝わらず、参加意欲や意識を低下させる(呼び起さない)原因になっている可能性があります。
「若者が参加しない、参加してくれない」というのは、役員目線の言葉であり、住民や若者からすると「なぜ参加しなければいけないの?」「それは何のためにやっているの?」「私に関係あることだったんですか?」と、参加の意味や必要性を認識できていなかっただけ、ということもあるのです。最近は家庭内での会話も減り、会話があったとしても地域のことが話題にあがることは少ないと聞きます。とすると、なおさら「知っているだろう」という前提条件は、通用しにくくなっているということです。
地域が疲弊していく姿を目の当たりにし、若者たちも少なからず「何とかしたい」という気持ちを持っています。彼らを「協力者」として迎え入れるための「努力」がこれからの時代には必要なのかもしれません。
ちょっと面倒かもしれませんが、地域内を回りながら声をかけ合う関係を再構築し、一つ一つの役割の意味や必要性を伝える工夫をしていきましょう。もちろん全てを引き継ぐのではなく、役や行事の「棚卸」も必要なので、地域内で話し合い、将来を見据えた地域運営の視点を持つことをお勧めします。