毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第25話(idea 2021年4月号掲載)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のために「新しい生活様式」が提案され、早一年が経過しようとしています。国内でもワクチン接種が始まったものの、ウイルスが消滅するわけではないので、依然、「withコロナ」時代は継続となります。
さて、「新しい生活様式」の実践の中では「働き方の新しいスタイル」も推奨され、社会は著しく変化しました。2020年5月に厚生労働省が提示した「『新しい生活様式』の実践例」の中で、「働き方の新しいスタイル」は以下のように提案されています。
■テレワークやローテーション勤務
■時差出勤でゆったりと
■オフィスはひろびろと
■会議はオンライン
■対面での打合せは換気とマスク
ここ最近で身近な言葉となった「テレワーク」※1や「オンライン会議」※2は、コロナ禍以前から存在してはいたものの、コロナ禍によって普及が加速したことは間違いありません。当センターも、オンライン会議など無縁の状態でしたが、コロナ禍で必要にかられ、導入しました。
※1 情報通信技術を活用し、時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働く勤労形態の一種
※2 Web会議やテレビ会議など、モニターやカメラ、マイクを使って遠隔地の人と画面越しに会議や打ち合わせができる仕組みの総称
▲当センターの月例スタッフ会議(一関-千厩)を「ZOOM」というサービスを活用してオンラインで行った時の様子
そんな「オンライン会議」ですが、自治会などの地域コミュニティや地域づくりの場面でもマッチするか考えてみます。
仕事の場においてのオンライン会議は、職場内にインターネット環境が整ってさえいれば、必要に応じて機材を揃えるだけで導入は容易ですが、地域の会議・会合での導入となると、環境整備のハードルが高いのが現状。 各家庭におけるインターネット環境の整備が進んできていることは確かなのですが、全世帯完備とはいかず、さらにインターネットユーザーすべてがZOOMやSkype等※3のオンライン会議ツールを使えるか(機材・機種の問題、知識・理解力の問題)というとそうでもありません。
※3 ZOOM、Skypeともに世界中で使用されているオンラインコミュニケーションツールの一種で、ビデオ通話が可能
自治会館など集落の拠点に目を移せば、‘集会’機能がメインで建てられているため、インターネット環境が整備されておらず、オンライン会議には不向きな状況。自治会長さんに会うたびに聞いてみているのですが、オンライン会議を導入している地域は見つかりませんでした(令和3年3月現在)。しかし、みなさんが口々に言うのは、「我々の年代では、オンライン会議は無理だが、若い人たちなら必要なのではないか」ということ。次世代を考えたら、オンライン会議は日常的なものになっているのかもしれませんが、今は難しいでしょう。
例えば、行政などが「行政区長会議をオンラインで行います」という流れを作ると、地域におけるオンライン会議の普及速度は早まるかもしれませんが、任期で人が入れ替わるため、個人宅の環境整備にまで行政が着手するかと言えばできません。とすると、自治会館など、集落の拠点施設への環境整備は考えられますが、自治会館は行政施設ではないため、インフラ工事はやはり難しく……。便利なツールではあるものの、地域コミュニティのように不特定多数の人たちが入れ替わりで関わる場面におけるオンライン会議の導入は、簡単なようで難しいのでしょう。
ただし、地域における「ICT」※4の導入なども施策として考えられているため、自治会館などへのインターネット環境の普及は近いと思われます。
※4 「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で、通信技術を活用したコミュニケーション、通信技術を利用した産業やサービスなどの総称
最後に、自治会内や消防団で「LINEグループ」※5を作って、情報の共有を始めているという話も耳にしています。ZOOM等を活用したオンライン会議までハードルをあげなくても(オンライン会議をやろうとすると逆に人が離れてしまう落とし穴にはまりそうですので)、今や身近なコミュニケーションツールとして定着した「LINE」の活用が、地域コミュニティにおけるオンライン化の適当なレベルなのかもしれません。
※5 スマートフォンやパソコン等で使用可能な無料のコミュニケーションツール「LINE」の機能の1つで、3人以上のユーザーが共通のトークルームで継続的に会話をすることができる