毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第27話(idea 2021年6月号掲載)
「ブーム」と言ったら失礼にあたるかもしれませんが、「地域づくり」に関して、地域の再興を願った様々な「取り組み」と、それを助長するような「制度」や「仕組み」が多面的に展開されている昨今。その展開のなかに、最近、「〇〇コーディネーター」という肩書の人が多くなったと感じているのは私だけでしょうか?そしてそこに違和感を覚えるのも私だけでしょうか?
ちょっと前の時代には、民間サービスや、地域の「結」などでカバーできていたようなモノ・コトが、時代の変化と共に消えゆき、その結果、思わぬ「隙間」ができてしまっていることがあります。その「隙間」を誰も埋めることができず、行政が「穴埋め」をせざる得なくなったものの、従来の行政職員では対応できないことが多いために、その隙間を埋める「コーディネーター」を配置する……という背景があるのではと推測しています。
しかし、コーディネーターを配置したからと言って、すぐに機能するかと言うと簡単にはいきません。実は、ここに「地域運営の落とし穴」が。‘その道のプロ’をコーディネーターとして配置するのであれば、機能するまで時間はかからないでしょうが、コーディネーターを「職業」として募集し、採用するとなると、採用された人は、プロではなく、ゼロからのスタートである場合があるのです。知識や経験がない状態では、コーディネーターとして体を成しえるまで時間がかかるでしょう。
コーディネーターがいるだけでは機能しない中で、「コーディネーターがいるから」と、頼りっぱなしになってしまった結果、地域住民のスキルやモチベーションが下がってしまう……という傾向(他力本願的)も見られます。コーディネーターを上手に「活用」すれば機能することも、あたかもコーディネーターを‘スーパーヒーロー’のように扱ってしまうことにより、立場が逆転してしまうなど、コーディネーターの存在によって地域内に温度変化が生じる事案を見たこともあります。 ←ここが落とし穴
また、コーディネーターを配置する側も、目的と成果目標を明確に示さず、‘ただ配置しただけ’にしか見えないケースも。←ここも落とし穴
コーディネーターを頼りすぎた結果、主役が地域
住民ではなくなり、
あたかもコーディ
ネーター主催の事業
のように見えてしま
うことも……。
コーディネーターは
増える一方ですが、
受け入れる「地域」の
数は変わりません。
そのため、地域側では誰
が何の役割なのか、整理
できなくなっている現状
も……。
そもそも「コーディネーター」とは何なのでしょうか?
コーディネーターと似たような言葉で「マッチング」もよく聞きますが、マッチングは「合わせること」「組み合わせること」を指し、コーディネートは「調整すること」「調和すること」を指します。どちらの行為も最適に行われることが期待されますが、マッチングは、在るものと在るものとの組み合わせを考え、モノが手元に無ければ「マッチングが出来ない」という結論になります。コーディネートにおいては、必要なものが手元に無いときには、適切に「調達」したりします。
コーディネーターの力量も問われるのですが、マッチングすればコーディネートが成立するかというとそうではなく、コーディネートする際は、時には外部との調整も行い、必要な情報を整理し、合意形成を図り、「支援対象者にとって最適な結論」を導き出すのが役割だと考えます。また、コーディネーターの‘独りよがり’では合意形成は得られないので、‘当事者目線に立つ’という立ち位置も常に意識しなければいけません。
コーディネートスキルは、簡単なようで難しく、奥深いものだと思っています。知識や経験だけでなく、「寄り添い方」や「場づくり」のスキルも求められ、一朝一夕では成しえないものでしょう。
自戒の念をこめて……。