毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第30話(idea 2021年9月号掲載)
当センターは地域づくりやまちづくりに関連する様々な「ワークショップ(前号参照)」をさせていただいていますが、いつも気になるのがワークショップの「目的」です。
ワークショップは、‘何を目的に、何を話し合い、その話し合いの結果をどのように取り扱っていくのか’という「プロセス」を、事前に丁寧に創りこむことが重要なのですが、ワークショップを開催したいという相談をいただき、お話を伺うと、その多くが「‘課題’をワークショップ形式で話し合わせたい」というオーダーです。
市民(住民)をせっかく集めるのだから、いまの現状や課題について聞きたいという気持ちは分かるのですが、ワークショップ開催の度に「課題を聞かせてください」と言われる市民は、「何度も同じことを話し合わせられるが、過去のワークショップで出した課題については、何か取り組まれたのか?」となってしまいます。
日頃現場に立つ我々は、「10年も前から課題を出し合っているが、10年前からの課題がそのままになっていることこそが課題である」というご意見をいただくこともしばしば。
テーマによっては課題から話し合うことも必要ですが、ワークショップが様々な場面で行われるようになった昨今、似たようなワークショップが開催されていることも多々。よって、ワークショップを開催する前に、似たようなテーマのワークショップが開催されていないか事前に把握する必要がありますし、あったとしたら議論の内容や成果を見せてもらい、その中から抽出できるモノがあれば、わざわざ似たようなワークショップを開催する必要はありません。「成果の共有」は、参加者(=住民)の負担を軽減することにつながるのです。
また、ワークショップの参加者選びにも工夫が必要です。「〇〇に関するワークショップを開催するので、地域から〇名推薦お願いします」という依頼文が出されますが、地域側(≒地域協働体、自治会、各種組織)は依頼側が想定するよりも住民との関係性が多様ではないという現実が。案内をいただいた人(自治会長や区長、地域協働体の長、事務局など)の知っている範囲でしか声をかけられないため、‘声がかかる人はいつも同じ’という状態に。これでは、せっかくのワークショップも‘多様な視点での話し合い’とはならず、それこそ10年前の課題が今も同じように述べられている状態になってしまいます。「みんなで結論を創り出す」ために有効なワークショップですが、人口減少によってプレーヤーが減少する中にあっては、単なる「住民の負担の増加」に終わってしまうのです。
市民の参加・参画を謳う行政は、いかに‘これまで関わったことのない市民と出会う工夫’ができるかが問われますし、仲介役となる地域母体では、常日頃から住民の把握に努め、日ごろの関係性を築き、多様に声がかけられる状態を築いておかないと、せっかくのワークショップもマンネリ化してしまいます。
「一関市後期総合計画基本計画」策定に係るワークショップ(令和元年度に実施)の設計を依頼された際には、上記のような状況を避けるために、「無作為抽出」で参加者をピックアップし、案内をかけてもらいました。現場に立つ我々でも出会ったことがない参加者ばかりで、意見が斬新だったことを記憶しています。
令和元年度に開催された「一関市後期総合計画基本計画」策定に係るワークショップ。「無作為抽出(20歳以上~80歳未満)及び推薦」で集められた市民が、2会場各2回で一関市が5年後にあるべき姿を検討。「よく分からないけど案内が届いたから来た。地域活動には関わったこともない」という参加者も多く、まさに多様な視点でのワークショップに! 推薦で参加した‘常連さん’にとっても良い刺激となりました。
人(参加者)が変われば話題に上る話も変わりますが、ワークショップ未経験の方(≒地域づくり・まちづくりに関する会議に参加する機会の少ない人)の意見ほど興味深いものです。そして、無作為抽出によって選ばれてきた参加者にとっては、新たな関係性の構築にもつながり、少なからず「まち」や「地域」に関心をもってもらう機会になります。
良かれと思って開催するワークショップが落とし穴にはまらないように、書き溜めておきます。