毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。

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第39話(idea 2022年6月号掲載)

今月のテーマ

地域運営の落とし穴㉓ 地域に発信すべき情報

情報発信は「予告」よりも「共有」重視!?

 

 前号は「自治会広報はデザインよりも内容」という話題でしたが、今月は「情報は‘発信’よりも‘共有’という視点が重要」という話題です(前号の内容と矛盾はしない……はず……)。

 

 一般的に情報発信は、「参加者が少ない」「自分たちの活動を知ってもらいたい」という動機から、‘予告’的に使われることが多いですが、実は、「プロセス」や「成果」の‘共有’の方が重要です(少なくとも我々は、予告よりもプロセスに関心が高いです)。

 

 

 最近はSNSの普及で誰でも様々な情報が発信できるようになり、予告的な発信だけでなく、プロセスや成果を目にすることも増えました。その多くは、プロジェクトベースのもので、新規事業のスタートアップやイベントなど、‘ファンを獲得する’という目的とイコールになっています。しかし、「まちづくり」や「地域づくり」に関する事業は、伝えるにはそれなりの文字量を要し、説明もややこしかったりするので、プロセスに関する情報発信は苦手とする傾向が……。

 

 

当センターもSNSで地域の会議の様子を伝えることがありますが、会議の報告は絵面に代わり映えがないのが悩みの種……苦笑

 先日、都市整備に関する会議に参加した時のこと。関係団体の長と地域の代表者が委員となり、工事の進捗や今後の展開などについて意見を交わしました。単なる説明会議ではなく、今後の設計に反映される期待もある内容のため、参加していても面白味があるのですが、ふと気になったのが「この会議の内容はどこまで地域に共有されているだろうか?」ということ。委員となっている地域の代表者で情報が止まっていないだろうか?と。地域住民にとっては日常生活の一部となるエリアの都市整備に関することであり、この情報は、住民こそ知るべき内容だと思うのですが……。

 

 地域の代表者を委員に任命した理由としては、地域の代表者であることのほか、会議内容を地域に持ち帰り、地域住民にフィードバックしてもらう役割への期待が大きいのではないかと推測するのですが、〇〇報を見ても、一度たりとも目にしたことがありません(掲載スペースを確保できないなど、紙面の都合で載せていないだけで、地域の代表者から事務局等には共有されているかもしれません。その時は悪しからず……)。

 

 「市の会議だから市が議事録などを市民に発信すべき」という考えもありますが、市の発信だけでは、地域にとって「どのくらい自分たちに関係するか」など、具体的に伝わってこないこともあります。地域にとって必要な情報は、会議参加者が必要性を切り取ることによって、‘リアル’を伝えることができるのです(地域に関わる会議を開催する市は、会議参加者に対し、そうした地域への共有を促すアナウンスをすることも必要です)。

 

 このように、「伝える」と一言で括っても、伝える内容は多種多様であり、実は、「広報は難しいもの」という認識をいつも持っています。新聞記者の方(元職・現役)ともお付き合いがあり、広報についての議論もさせていただくのですが、プロの新聞記者の視点は、‘行間を読ませるような記事を書く’ことだそうです。‘行間を読ませる’とは、ストレートには書かず、読者に感じて欲しいことを含ませて書くことを指し、それは職人技です。ですが、広報を軽んじて考える人も少なくなく、「〇〇報を作れば広報の仕事」としてしまいがちですが、広報こそ「戦略(発行計画)」を持って、紙面構成を考え、じっくりと考えて作るべきものなのです。

 

 自治会広報は、‘楽しく親しみやすく’がモットーでも良いのですが、市民センター広報や団体の会報などは、その組織の存在意義から考えても、浅い内容のものではなく、住民や関係者への問題提起となること、知っておいてもらいたいことなど、深みが求められます。「〇〇教室が開催されました」「みなさん、楽しんでいました」のような‘ました’‘でした’の報告事項ばかり並べられる広報では、関心を促すことはできません。広報は、情報を「共有する」ための「手法」の一つであり、市民参加のきっかけづくりの役割でもあります。

 

 現代のように情報ツールがたくさんある時代、何を使って発信したらいいか迷うということもありますが、「‘イマ’を伝えるSNS」、「‘公式な情報’を伝えるホームページ」というように、使用用途を意識しないと、「情報発信している‘つもり’」になってしまいます。……と、またも自戒の念を込めて……(笑)

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