毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第41話(idea 2022年8月号掲載)
一関市では、行政施策として市民センター(旧公民館)単位で「地域協働体(地域運営組織)」を設立し、‘広域での地域づくり’を進めているところですが、地域協働体の運営は、難しいと実感しています。既存の自治会は、これまでの何十年の経験の積み上げで運営体制を確立しているのに対して、地域協働体は、設立から日も浅く、まだまだ運営方法は模索中であるためです。加えて、シンプルに「地域づくり」をするだけではなく、プラスαの業務(市民センターの指定管理受託等)も展開できることが、運営の難しさに拍車をかけています。
広域での地域づくりを進めるにあたり、先ず着手したのが、市民センター単位の地域状況の把握です。どんな組織があり、どんな事業(行事)が行われているかなど、自治会単位ではなく、広域で構造を見てみると、改めて地域の仕組みが見えてきます。当センターも地域協働体の設立時に、「少子高齢化・人口減少時代に備えて、各種見直しを行い、近い将来に備えましょう」という説明をしてきました。今の地域運営スタイルは人が多かった時代に築き上げてきたものであり、担い手が少なくなる将来には、同様には成り立たないからです。
地域協働体の運営を行う中で、地域にとっての負担、時代的に不要なところが見えてきて、見直しの必要性には多くの地域が共感してくれました。ただ、目の前にある課題を解決しなければいけないという思いや、見直しによってこれまでのあり方がリセットされるのではという恐怖感から、実際には見直しに着手しない地域がほとんど。それが、コロナ禍で突如発生した‘少しの余裕’により、見直しの検討を始めた地域が出てきました。
しかし、いざ見直すとなると、「必要」か「不要」のジャッジになり、「負担が大きい」と感じることや「自分たちには到底難しい」ということから仕訳が始まります。もちろん、それは必要なのですが、‘一度原点に帰る’という‘ひと手間’をかけてほしいのです。と言うのも、そもそもの「きっかけ」や「目的」が必ずあるはずだからです。時間の経過とともに「目的」が薄くなり、違う方向に進んでいたりすると、「不要」と判断されてしまうことも……。今現在の「事業」部分にだけ目を向けるのでなく、「そもそもの目的」や事業化に至った「背景」を探ってみる・立ち返ってみることも、大事な「見直し」なのではないでしょうか。その結果、「本来の目的」が達成されていないようなら、今一度、再起動する必要があるでしょう。
地域協働体が、「事業の度に住民に協力をお願いしている」ことが、「もしかしたら住民の負担を増やしているのでは?」という事務局の悩み相談を受けたことがあります。本来の目的と照らし合わせて考えてみると、決して負担を強いているのではなく、‘そもそも地域全体で取り組むべきこと’だったりします。目先のことだけではなく、「そもそもの目的に対して、どのような手段を取るべきなのか」を考えながら運営していかなければいけません。
「負担をかけて申し訳ない」という気持ちも分からなくはないのですが、申し訳なさから声をかけなくなったら、果たしてどうなるのか……?これまで築いてきた‘地域協働体(≒旧公民館)と住民(≒自治会等)との関係性’が失われてしまうということも。「ちょっと負担かもしれないけど協力してもらう」ことで、地域協働体のことを理解してもらったり、自治会等が困った時には、協働体がサポートする関係性が維持できるのです。
昔と比べ、人と人、地域と地域の関係が希薄になっているので、‘見直し’はお勧めしますが、「負担軽減」のつもりからの‘見直しのしすぎ’は、地域のつながりをますます希薄にしてしまうので注意が必要です。
ちなみに、「行政から降りてくる仕事が多すぎる……」という課題もありますが、実は、‘行政と地域がつながる数少ない現場’だったりもします。「負担」という意見に惑わされて簡単に無くすのではなく、「どのようにアレンジしたらいいか」を検討するように慎重になるべきですね。
「摺沢振興会」理事会における「第1期地域づくり計画」見直しの様子(2022年1月)。部会は置かず、各種事業を「この指とまれ」方式で行っているため、事業が本来の目的からズレていなかったか、「大目的」「中目的」が見えるようにした上で、整理・検証を行いました。
「関が丘まちづくり協議会」における「第1回関が丘地区地域づくり計画見直しワークショップ」の様子(2021年10月)。部会員の入れ替わりも複数あったことから、各事業の「そもそもの目的」を確認することからスタート。2回目以降は部会の枠を超えて検討しました。