毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第46話(idea 2023年1月号掲載)
必要なのは「寄り添い」と「処方箋」
少子化、高齢化、人口減少により、これまで自治会や集落などの地縁組織が担ってきた「地域生活」を送るための機能や仕組みに支障が出始めています。そうした現状に対し、「地方創生」の動きも受けて、従来の自治会や集落の機能を補完する「地域運営組織」の設立が進められ、これら組織が機能していくために、‘中間支援’の役割発揮も期待されるようになっています(前号参照)。
ここで注意して欲しいのが、‘課題解決’という言葉です。「地域のいまを見れば、課題だらけである」とはよく聞くものの、‘課題解決’という言葉を使う人ほど何も解決していません。まさに落とし穴。自慢じゃないですが、当センターは、‘課題解決’という言葉は使いません。
‘課題解決’への特効薬がある訳がないことは周知の事実。特効薬がない中でなすべきことは「どんな状況が、何を引き起こしているか」を分析することであり、それに対して‘処方’してあげることが支援者の役割だと当センターは考えています。決して‘お薬’を出してあげることではないと思うのです。
‘課題解決’という言葉を使う人が素晴らしく見えてしまうのは仕方のないことですし、誰かを頼りたい(すがりたい)気持ちはよくわかります。しかし、他力本願的になってしまっては、支援者がいなくなった途端に持続性・継続性がなくなってしまいます。大事なのは自治力の向上であり、そのためには、‘やってあげる’ことではなく、共に考え、道筋を整理し、やろうという気持ち・モチベーションを高めていくことが大事で、支援者は、その期待に応えるために‘寄り添う’のです。
人口減少が進むにつれて、既存のセクターではできないことが増えていきます。「中間支援役や‘〇〇コーディネーター’の存在が必要」という動きがますます増えていくでしょうが、本コラム第27話でも触れたように、「配置する」ことが目的ではなく、「機能する」こと、そして、「機能し続ける」ことが大事です。
‘中間支援’の立ち位置と評価
ところで、そもそも‘中間’とは、どこの中間にいるのでしょうか?福祉分野や農業分野、環境分野など、様々な分野で‘中間支援’という言葉を見かけますが、これを最近は、‘分野別中間支援’という呼び方をするようです。分野別の‘中間支援’までもが台頭し始めた背景としては、ニーズの多様化に伴い、それぞれの分野で‘プレーヤー(ここでは「仕掛け人」のような意味合い)’が登場するようになり、各分野における事業の幅や種類も増加。しかし、それぞれの動きになってしまうことが多いため、各プレーヤーたちが膝を交え、「協働」により成果を高めていくことが必要であり、そのために「中間で支援する存在」が必要だ……という構図なのでしょう。
‘分野別中間支援’であれど、当該分野内にとどまってしまっては、縦割りでしかありません。中間に位置する者は、他分野との連携も意識し、つなぎながら成果を引き出すように心がけることが必要です。いずれにしても上述(前段)のように、中間に位置する者の「意識(お薬<処方)」が大事です。
そして「‘中間支援’が必要」と言いつつ、落とし穴となっているのは「その価値を評価する仕組み」が構築されていないこと。‘中間支援’を生業としていくとして、支援先であるNPOや地域からの対価で安定した運営ができるかというと現実的ではないため、行政からの受託事業が安定的な収入源にならざるを得ません。しかし、受託事業費が中間支援活動に対するニーズの高まりやスキルの向上に合わせて上がっていくという好循環がなければ、支援の質が下がってしまうことも。その結果、適切な評価につながらず、受託事業費が下がる……という悪循環に陥ることになってしまっては、必要性と実用性に違和感が出てしまいます。
‘中間支援’は明確な定義づけがされていないがために、「中間支援をしています」と言えば、‘中間支援(役/組織)’であるということに。そのうえ、‘中間支援’のように、カタチのない商品は金額換算が難しいことは確か。ゆえに、必要性はありながら、それを担う組織や人材が成長していかないのです。
さてみなさん、‘課題解決’と言わないことがモットーの当センター(=中間支援組織)の価値はいかほどでしょうか(笑)