毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第54話(idea 2023年9月号掲載)
先日、ある地域協働体の地域づくり計画の見直しワークショップで、‘安全安心’に関する課題・取り組みの考え方について、以下のような意見が出ました。
「地域づくり計画」を策定し始めた時期は、‘安心安全’と言えば‘地域防災’がメインだった。その後、自治会マップを作ったりしながら、ある程度、地域防災の取り組みは落ち着きを見せた。治水対策も行われた。
‘地域防災’の意識は常に持っていなければいけないが、今の時代に取り組まなければいけない=私たちの安心安全を脅かしているのは、SNSや特殊詐欺など、個人をターゲットにした‘迷惑行為’や‘犯罪行為’なのではないか。
中高年世代の中には、「特殊詐欺が怖いから固定電話は取らないようにしている」という実態もあるようで、自治会の連絡などすら行き届かない状態になることを危惧していました。かと言って、自治会で「LINE」をやろうとしても、年代によっては使いこなせないため、単に情報伝達手段をSNS等の電話ではない媒体に切り替えれば解決することではなく、そもそもの‘地域防犯の取り組み’が必要だという流れに。
そんな中、また著名人の自殺報道がありました。SNSの書き込みが原因ではないだろうか?という推測もあります。SNSのコメントは、コミュニケーションが取れる楽しみがありつつも、見ず知らずの人からのコメントや、辛辣な書き込みもあり、その取扱いには注意喚起がされ続けています。しかし、一向に収まる気配はありません。
SNS問題は、誹謗中傷の書き込みだけではなく、‘寿司テロ’に代表されるように、迷惑動画の拡散行為も記憶に新しいどころか、現在進行形で続いています。迷惑動画の拡散については、「迷惑行為をした人」が大々的に取り上げられることが多く、「動画を撮影しアップロードした人」はあまり取り上げられないことが不思議で仕方ありません。迷惑行為を面白がっていないで注意できなかったものだろうか?迷惑行為をした人、動画を撮りアップロードした人、どちらも同罪ではないかと……(迷惑動画の撮影と投稿をした人が「威力業務妨害の疑い」で逮捕された事例もあり)。
子どものインターネット使用のルールについては、学校教育の一環でも指導しています。さらに一関市では、市民センターの共通事業(34ある全市民センターの共通テーマ)としても取り組んでいます。しかし、具体的な取り組み内容としては、「各家庭で使用時間を決める(ための周知)」というような、学校と変わらない内容を事業化していることも多く……。地域づくりや社会教育の視点で立案をするなら、上述のような社会問題があることから、「安心安全にインターネットを利用するためにはどうすれば良いのか」という、「ルールなどを学ぶ機会」を提供してほしいものです。なぜなら、現代社会は‘情報’で溢れていて、何もしていなくても情報が入ってくるからです。主体的にインターネットを利用していなくても、インターネットを介した情報には触れてしまうのです。つまり、「制限」をかけるのではなく、実社会で安全安心に暮らせるように、「正しい使い方」「情報との正しい向き合い方」を、しっかりと教えないと、身近なところにこそ危険が潜んでいます。
しかし、ここでまた問題が。子どもにはダメという大人が、長時間インターネットを使っているのです。ひと昔前はテレビがダメ、ゲームがダメの時代でしたが、今は、インターネットがダメ。ただ言語を変えただけで、注意している内容は「ダメ」でしかなく、時代は変化しても注意の仕方は変わっていません。
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」など、デジタル技術を中心とした社会が形成されようとしている今、インターネット無しでは生活できないような状況になっています。そんな中、‘注意の仕方’が変わらないのは、‘どう注意すれば良いのか’が分からないからではないでしょうか。スマートフォンが登場し、簡単にSNSを使えるようになり、使いこなすことがゴールのようになっていますが、使い方だけでなく、「情報を取り扱っている」こと、「コミュニケーションをとっている」こと、「インターネットの向こう側には、人間がいる」ということをしっかりと教えないと、この手の課題はクリアにならないでしょう。