毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第57話(idea 2023年12月号掲載)
「自治会対抗バレーボール大会」が育てる「人間力」
新型コロナウィルス感染症が5類に移行した5月以降、大小様々な‘イベント事業’が各地で多数開催され、良い意味で‘交流’が盛んに行われています。半面、少子化、高齢化、人口減少の影響が目に見えて現れるようになり、夏祭りのような大規模なイベントは、踊りや神輿等に関わる世代(生産年齢人口)の減少で、かつての温度感は維持できていないように見受けられます。地域の‘イベント事業’も復活してはいるものの、人口減少で規模が小さくなり、運営側も高齢化により苦しい状況が……(第53話参照)。
そんな中、大東町で「一関市大東ママさんパパさんバレーボール大会」が4年ぶりに開かれた(10月8日)のですが、エントリー数は30チームと、全盛期の参加チーム数(最高268チーム)から比べ10分の1に。この現状を受け、運営側が今後の継続について慎重になっていると聞き、その現場を見に行ってきました。
大東町は「バレーボールのまち」として全国でも有名で、各自治会館にはバレーボールコート(だいたいが屋外)があり、大会前1~2か月は、仕事後(夜間)に練習する姿が当たり前だったようです。昭和40年代、「農婦症(農作業からくる腰痛や肩こりなど)」の解消対策のために興田地区で始まり、間もなく大東町全体での取り組みとなりました。東京オリンピックで女子バレーボールが優勝し、東洋の魔女ブームにあやかったというエピソードもあるようですが、バレーボール大会がこれほどまでに普及した背景を、地区民運動会と比較しながら分析してみました。
地区民運動会もバレーボール大会も、どちらも自治会対抗で行われることが多いですが、地区民運動会は、集落の陣地に集合し開会式に参加、そしてプログラムに沿った競技に参加していくもので、例えば50m走であれば、選手がスタート前に集まり、整列しスタート。走り終えれば商品をもらって終わり。ボール送りなど他の競技も同様です。一方、バレーボール大会は、試合前にコートに整列し、対戦相手と礼をし、それぞれのポジションへ。試合後は、コートに整列し、礼をして終わります。相手チームと握手をしたりもします。この時点で、運動会とバレーボール大会の違いが!
それは「試合(参加)に臨む姿勢」です。地区民運動会もバレーボール大会も、参加することに意義があるとは言うものの、ただ‘参加’するのと‘礼をしてから参加する’のでは、所作の違いにものすごく差を感じました。また、バレーボールの場合、試合時間も長いので、チーム内でのコミュニケーション、自治会としてのコミュニケーションも重要で、声を掛け合う、応援することで、試合時間が進めば進むほど熱が入ります。プレーしている選手たちは、ミスをしてもカバーしあい、年代の壁も認め合い、まさに多様性が実現されています。
「交流事業」の意味・意義は、幅広いものではありますが、このように「人を育てる場面」として分析できるとは思ってもいませんでした。
「人が集う交流の中には、様々な学びがある」とはよく言うものの、社会性、所作など、「人を育てる場」が「交流事業」なのです。ただ楽しむ事業ではなく、交流事業を通じて人を知り、関係性を構築していく。
大東地域に限らず、当市内で開催されている自治会対抗のバレーボール大会は、自治会の縮小もあり、参加チームは激減していますが、個の時代と言われる今、このような‘ちょっとの強制力’をもって、「みんなが集い、認め合う場」を作っていかないと、人が育ちません。‘ちょっとの強制力’が難しいけれど、ここを頑張っていかないと、これからの時代、地域住民間の関係性は薄くなる一方で、やばいなと感じてしまいます。
人が多かった時代に築き上げたものは多々ありますが、根っこにあったのは、「コミュニケーション機会を創ること」だったんだと思います。「人が少ないからできない」のではなく、「少ない人でコミュニケーションが取れるようにしていく」ことが大事ですね。
令和5年度の「一関市大東ママさんパパさんバレーボール大会」にて。「大東グラウンド」に特設バレーボールコートを10面設置して開催(かつては20面以上設置)。
各チーム(自治会)のユニフォームには自治会名がしっかり入り、自治会を背負って戦います。また、他出者も「ふるさと選手」として2名まで参加が認められており、ふるさと選手の証として左腕に腕章をつけています(写真の彼もふるさと選手)。