毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第62話(idea 2024年5月号掲載)
「組織」ではなく「機能」で考える
これだけは、声を大にして言いたい……!「地域協働体は、RMOです!」
一関市では、合併を契機に「協働のまちづくり」を施策に掲げました。新市としてのまちづくり施策ですが、その背景には、見えない課題、課題の難解化かつ複雑化に少しでも対応していかなければ……という課題感があり、「地域協働体」の設立に至ります。「地域協働体」は、行政区や自治会の人口格差が広がっていることもあり、市民センター(旧公民館)単位で一定量の人口を確保し、地域づくりを進めていく‘広域の地域づくりシステム’の手法です。
一関市が地域協働体の設立を始めた頃、国も、従来の行政主導の地域づくりから、小学校区や公民館単位の地域づくりへシフトチェンジし始めます。ここで提唱されるのが「地域運営組織(Region Management Organization)」であり、通称「RMO」です。Region(リージョン:地域) Management(マネジメント:管理) Organization(オーガナイゼーション:組織)は、直訳すると‘地域を管理する組織’であり、ここで言う「地域」は、小学校区もしくは公民館単位のような「広域の地域」です。
一関市では「地域協働体」という呼称ですが、全国的には「地域運営組織」という呼称になるのです。全国的にRMOの取り組みは広がり、令和5年度の総務省の調査では、全国で7,710団体あると報告されています。それだけ一つ一つの集落規模の縮小が課題となり、広域での取り組みが受け入れられているということと受け止めます。
さらに、農林水産省が農村集落の少子高齢化を背景に、集落の維持や生活支援のための「農村RMO」という提案をし始め(本誌2023年3月号「地域運営の落とし穴㉜ 『農村RMO』の出現」参照)、従来のRMOは、「一般RMO」と呼ばれるなど、区別されるようになったのです。この時点でややこしいですね。
地域運営組織による地域づくり事業が積極的に行われるようになったものの、農村集落における景観維持や生活支援に関する課題の優先度が高まったため、農村集落に地域運営組織の手法を取り入れようとした背景なのでしょうか(推測です)。
一関市では、地域協働体という地域運営組織を設立し、地域ごとの課題やニーズに合わせた取り組みをしており、農村集落の維持や生活支援に関することも網羅されているため、農村RMOを特別視することはなかったのですが、農村RMO設立の気配がざわつき始めて……。
しかし、農村RMOと地域協働体は、同じものだと説明をしても、なかなか理解され難く、そもそも地域協働体の理解もいま一つのところに、農村RMOの説明をかぶせてしまう状況になり、RMOという言葉そのものがストレートに使われる農村RMOのことを、RMOと言われるようになってしまいました。我々からしたら違和感でしかありません。RMOは地域運営組織(=地域協働体)、農村版の地域運営組織が農村RMOだからです。でも、市民からしたら新しい専門用語が出てきただけで、何が、どう違うのかなど気にすることではないでしょう。制度の縦割りの悪い部分が露呈してしまい、現場や住民を混乱させる状態を作ってしまいました。
一関市民のみなさんに言いたい!
一関市に33団体設立されている地域協働体は、一般RMOと農村RMOの両方の機能を兼ね備えているのです。
つまり、農村RMOと同じ枠組みの「地域協働体」という組織を設立しているのですから、農村RMOを改めて設立する必要はなく、地域協働体という母体に、‘農村RMOの機能’を付加させていけば良いだけのことなんです……!
※本誌2023年5月号「地域運営の落とし穴㉞ 農村RMOと地域協働体」もご参照ください。