毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第65話(idea 2024年8月号掲載)
‘課題解決の手法’としての‘コミュニティ・スクール’
令和6年度から一関市内すべての小中学校で「コミュニティ・スクール」が開始されました。「コミュニティ・スクール」とは、一言で説明すると「学校運営協議会」を設置した学校のことを指します※1。
一関市の場合、「学校運営‘支援’協議会」となっているのが他自治体との違いで、地域住民の参加(支援)によって‘地域の特色ある学校づくり’を進めるものですが、「教育振興運動(以下、教振)」とどう違うのだろうか?という疑問も。
「教振」は、岩手県が全国に先駆けて提唱し、昭和40年頃から各地で取組が始まりました。
地域によって内容は異なりますが、単なる教育や学習の視点で‘教育水準’を上げるのではなく、教育水準をあげるために‘教育環境’を整えることに重きがおかれてきたものです※2。
当時、県内の子どもたちの学力は全国最下位に近く、その背後に隠れている‘家庭環境によって引き起こされている課題’に対して、学校と地域が連携・協働して教育基盤を整えてきたことは、課題解決手法の見本とも言えるでしょう。
そうした取組や時代の変化により、家庭環境がある程度整ってきた今、子どもの‘体験機会の減少’という課題に向き合い、‘〇〇教室’や‘〇〇体験’のような機会提供の取組が主になっているのが最近の教振の特徴です。
しかし、現代の子どもたちには「隠れ貧困」や「ヤングケアラー」など、新たな課題が生まれています。かつ、課題の複雑化・多様化だけでなく、課題が見えない・見えにくいという状況が……。
学校に「スクールカウンセラー」や「ソーシャルワーカー」を配置するなど、体験の機会や安全安心の確保のため、「地域学校協働活動」として幅広い地域住民等の参画が促進されていますが、それぞれの機能は作用しているものの、‘一体的’ではないように感じます。
コミュニティ・スクールにおいては、学校運営支援協議会の‘設置’だけではなく、協議会が中心(ハブ)となり、‘一つ一つの機能を連携・協働させる’ことで、学力の向上と生活環境を整えつつ、子どもの成長支援のために‘地域と学校が同じ目標を持って進んでいく’ことが大事なのではないでしょうか。
岩手県は、「コミュニティ・スクールの導入により、教振の‘組織’は発展的に解消する」と言いながら、教振の‘機能’は、コミュニティ・スクールに組み込むか、並行して進めていくという方針。
コミュニティ・スクールは‘地域の特色ある学校づくり’という表現から、伝統芸能やスポーツ・文化活動に取り組むようなイメージがありますが、「子どもたちを取り巻く課題の‘解決手法’に、‘地域の特色’が活かされている」という意味も含まれていることを願いたいです。……とすると、学校、学校運営支援協議会、地域協働体、専門機関がつながり、「補完性の原則」に基づいて、それぞれの専門領域の‘強みの掛け算’がされている状態が必要です。
今は、学校運営支援協議会が設置され、スタートしたばかりですが、いずれ教振の機能と一体的になり、本当の意味の「コミュニティ・スクール」になることを期待しています。
岩手県は、教振というベースがあるので、ある意味‘教振の原点回帰’なのかなと感じたところです。教振の必要性が提唱された昭和30~40年代と環境の違いはあれど、もしかしたら課題のレベル感は、その当時と同じくらいの難解さを持っているかもしれません。
‘働き方改革の延長’と捉える方もいるかもしれませんが、学校だけで解決できない課題が多くなってきたために、地域との連携・協働により向き合っていかなければならない時代でもある、ということなのではないでしょうか。
※1 本誌2024年4月号「二言三言(「『学校』と『地域』の『これから』~コミュニティ・スクールと地域部活動~」)」参照)
※2 本誌2023年2月号「二言三言(「子どもたちを『人間として教育する』~次代のリーダーを育てるために~」)」参照)