毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。

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第70話(idea 2025年1月号掲載)

今月のテーマ

地域運営の落とし穴(54)

お手当のはなし

「地域の悩み」の‘処方箋’

 令和5年5月に新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」へと移行し、徐々に市内の行事や会議も復活。「4年ぶりに日常が戻ってきた」と感じる今年は、みなさんにとっても賑やかな1年だったのではないかと思います。

 

 昨年は、コロナ禍から復興するような勢いもありつつ、主催することで感染源になるかもしれない不安や、コロナ禍を経てブランクを感じる悩みが多くありましたが、今年は「今後の事業継続や運営継続の困難さ」が悩みの中心に。誰もが、コロナ禍よりも前から、少しずつ気づいていて、考えてはいたものの、「何とかなっていた」……いや、「何とかしていた」ことが、そろそろ限界になってきたのです。その流れから、「話し合いを行い見直しをしていきたい」と、当センターにもワークショップ支援の依頼が増えています。

 

 一部を紹介すると、ある地域では「伝統的に続いている行事の運営見直し案件」、ある地域では「組織の停滞から発想の限界を迎え、第三者に議論を委ねる案件」、ある地域では「自治会不要論から自治会の在り方を検討する案件」……。これまで頑張ってきたゆえに負ってきた、傷(=悩み)の多さ・深さは計り知れません。

 

 そのような中で必要となっているのが、‘お手当’。昔からある施術方法で、みなさんが子どもの頃、「頭が痛い」と言うと家族におでこをおさえてもらったり、「お腹が痛い」と言えばさすってもらった経験があると思いますが、不思議なことに手を当てることで落ち着き、痛みが和らいだりします。いわゆる‘手当て療法’のことで、世界各地で見られる民間療法だそうです。その昔、ハンドパワーなんて言葉が流行ったこともありますが、‘お手当’はまさに「手」が持つ力なのでしょう。

 

 地域づくりとしての‘お手当’は、本誌2023年1月号掲載第46話にも記載していたとおり、「どんな状況が、何を引き起こしているか」を分析し、それに対して‘処方’してあげること。今回の場合の‘処方’は、「話し合いの場をつくり、当事者同士で、時には第三者も交えて様々な視点から考えてもらうこと」です。その話し合いの結果が‘処方箋’となり、見直しの実行段階に移行することができます。私たちスタッフも、日々、たくさんの話し合いの現場に行きますが、一つ一つの現場で目にする、話し合いの力というものを感じています。

 

<ケース① 地域の体育行事の今後>

 どの地域でも、地区民運動会やスポーツ行事がありますが、参加者の固定化やマンネリ化が課題としてあがります。この課題に向き合った話し合いでは、「運動に対して苦手意識がある人は、『運動会』という言葉で敬遠するが、『健康増進のために体を動かす必要がある』ということは理解している」と分析。それに対しての処方で「参加しやすい交流イベントにする」などの提案がされました。たしかに、運動が苦手な人は、運動会に対する苦手意識が先に出てしまい、「行きたくない」って思いますよね。

 

<ケース② 自治会は不要なのか? >

 前号にも掲載していましたが、町内会の在り方を見直すために、「町内会が無くなったらどうなる?」と題して話し合ったところ、「町内会が無くなると、個人でやらなければいけないことが多くなる」と分析し、「暮らしの安心安全のためには、組織的な取り組みが必要」という結果に。さらに、子供会育成会が実施している廃品回収の話題になり、今と昔の取り組みを比較したところ、「目的」が変わってしまっていたことが判明……!‘やることだけの継承’になっており、本来の「地域の子どもと住民が顔を合わせる機会にする」という目的を見失っていたという課題の発見にもつながりました。

 

 このように、個人では考えられないことでも、‘「話し合い」という処方’で様々なヒントが生まれてきます。悩んだ時には、心に、事業に、組織に手を当て、みんなで話し合いながら‘お手当て’をしていきましょう。

水口民区(一関市滝沢) 班長会議の様子

水口民区(一関市滝沢)で定期的に行われている班長会議。民区活動の進捗状況などについて「話し合う場」を設け、地域の悩みも共有しています。写真は令和6年5月の様子。


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