毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。

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第73話(idea 2025年4月号掲載)

今月のテーマ

 

地域運営の落とし穴(57)

働く幸せ

 

 「働き方改革」と言われてから、働く環境がだいぶ変わってきました。

 「Wワーク」や「テレワーク」のような働くスタイルの変化、「週休三日制」や「フレックスタイム」など働く時間の変化、などなど……。働き方の多様性や労働力の確保を目的としたこの改革によって、プラスとマイナスの要素が入り混じっているのが、まさに今でしょうか。部活動の地域移行も教職員の働き方改革の一つとされ、制度が進んでいますが、実際は、難航しているようです。

 何事も、初めからすんなりと行くことは難しいでしょう。現在の混沌とした時期を経て、徐々に慣れていくのだと思います。それにしても、「改革」という言葉の意味が強く、正直、恐怖さえ感じたりしませんか?「実際、そこまで変わらないんでしょう?」と思うと、「『改善』の方が合っているのでは?」と思ったり……。

働く=稼ぐ?

 この地域の人たちは、働くことを「稼ぐ」と表現することもあります。

 

 ずいぶん前のことですが、どこかの地域の地域おこし協力隊が、「この地域の人は『稼ぎに行く』というが、まったく稼いでいなくて、無駄働きになっているのではないか?もっとビジネスの意識を持つべき」と指摘したことがありました。

 

 この地域で言う「稼ぐ」は、働くことを指し、「稼ぐ」=「儲ける」という意味合いではないはずです。よそ者目線から見て、「頑張って働いているのだから、奉仕ではなく営利をもっと追求してもよい、地域には、それだけの力がある」という意味で、良かれと思って発言したのでしょうが、誤解を生んでしまいますね。

 

 ちなみに「稼ぐ」の意味を『デジタル大辞泉』で調べると、『①生計を立てるために、一生懸命に働く。②働いてお金を得る。③試合などで、得点をあげる。④(「点をかせぐ」「点数をかせぐ」の形で)自分の立場が有利になるように行動をとる。評価を高める。⑤都合のよい状態になるまで何かをして時間を経過させる。⑥探し求める。』となっており、営利的な意味合いは薄いようです。言葉って難しいですね。

働く=誰かのために

 先日、叔父の葬儀に参列した時に、住職さんが働くとは、傍を楽にすること誰かのために働き、誰かを楽にしてあげること」だと説明していました。温厚な人柄だった叔父は、草刈や趣味の山菜採りなど、家族や誰かを思いやっていたのでしょう。傍を楽にするために生きたのだと思います。

 

 住職さんの言葉を受け止めて、「働く」について考えたのですが、現代では、‘誰か(無関係な他人または第三者)のためではなく、自分(≒家族)の収入のために働く’と考えている人が多いように感じます。

 

 働く先や職場(所属先)に置き換えて考えると、「働くことによりサービスを提供して、誰かを楽にしていること」になりますよね。「やりがいがない」と言う人もいますが、自分の仕事が誰かのためになるのであれば、それをポジティブに、やりがいと捉えることはできないでしょうか?

 

 働き方改革は、どの組織でも積極的に取り組むようになっていますが、労働環境の整備が必要な中でも、働くことの意義は忘れてはいけないと思います。自分が良くなればいいのではなく、働いた成果として「傍を楽にする」のだと。傍を楽にするという響き、とっても素敵ですね。


フクロウ① ことぶきカフェ
フクロウ② ことぶきカフェ

大東町「摺沢振興会」の事業「フリースペース・住民交流の場創出事業」では、JR摺沢駅に隣接されていた旧売店を活用し、「ことぶきカフェ※」を展開(毎月第2・4火曜日)。カフェの運営は「摺沢寿会(老人クラブ)」が行っています。地域の支え合いも「傍を楽にする」ことに繋がりますね。

※居場所づくりとしてのサロン的なものであり、喫茶店として営業しているものではない。