毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。

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第74話(idea 2025年5月号掲載)

今月のテーマ

 

地域運営の落とし穴(58)

地域協働体について(再確認用)

 

‘地域の総合力’で人口減少社会の地域課題と向き合うために 

  改選期を迎える地域が多く、新たに自治会長や役員になった方もいらっしゃると思います。新役員さん、継続された役員さん、よろしくお願いいたします。自治会(民区、集落公民館)の役員になり、新たに地域協働体に関わる方もいらっしゃいますので、改めて地域協働体についてお伝えします。

 

地域協働体とは?

 

 地域協働体は、集落機能を「補完」する役割を持ち、基本は「円卓会議」を行う「話し合いの場」です。集落機能の補完とは、基礎集落ごとに人口の増減や年齢構成のばらつきが目立ち始め、多様な活動を行うための担い手の確保が困難になってきているため、‘市民センター単位の広域的な取り組み’を必要に応じて行うことを指します。地区民運動会で選手が足りないから隣近所の自治会で選手の補完をしていることを例に挙げればイメージしやすいかと思いますが、そのような取り組みを日常的な地域づくりに取り入れて‘支え合いの仕組みを再構築する’と言えば伝わるでしょうか?

 

 地域協働体の設立は、これまであった基礎集落を廃止するということではありません。むしろ、基礎集落機能を重視するために、補完の仕組みを構築するものです。

 

 慣習的行事が多い自治会に対して、地域協働体は、地縁でつながる様々な人、組織、団体が連携し、子どもから高齢者まで性別に関わらず、単位自治会だけでは解決が困難なことを、‘地域の総合力’で解決することが目的であり、自治会とは性格が異なります。

 

 そのために、地域や各種団体の課題、想いを持ち寄り議論する「円卓会議の場」が重要なのです。

 

 


メモ:きっかけは合併

 市域が広くなった一関市では、新たなまちづくり施策が必要となり、「協働のまちづくり」の推進を掲げました。「協働による地域づくり」を推進するために、地域協働体の設置が必要になったのです。また、基礎集落の縮小から、人口が少なくなっても地域運営を可能にしていくための人口減少対策の意味合いも込められています。



「地域づくり交付金」の使い方

 

 地域協働体には、「地域づくり計画」を実行していくために毎年「地域づくり交付金」が交付されています。この交付金ですが、3年まで繰越可能という特徴を持っています。

 

 課題があって、解決するために事業をするのですが、その事業が生まれるまでの期間は、すぐに着手できるものと、長期的なものがあります。長期的な取り組みとなると、課題を分析し事業の方向性を議論すると1年が経ってしまうことも。そこで交付金を繰り越し、2年目に実証事業として取り組み、実証の結果を踏まえて、3年目に本格的に取り組むというイメージです。

 

 これまでは1年で使いきれない場合は、戻すということが多かったので、残さず使えという習慣になっていることもありますが、課題解決には時間がかかるので、繰越すことができるようになっています。何事もそうですが、事業そのものには目的があって導入されているので、目的や仕組みを理解した上で関わらないと落とし穴になるのでご注意ください。

 


地域協働体の役割

 

 「地域づくり」となると、‘事業’をイメージする方がいらっしゃると思いますが、地域協働体は事業を優先するのではなく、‘地域の状況や課題を把握’することから始まります。というのも、市民センター単位の地域には複数自治会(民区、集落公民館)があり、それぞれの地域事情が異なります。なので、‘共通課題や個別課題などを把握’し、分析しながら、課題解決の糸口を探っていきます。糸口が見えたら、‘地域への共有’という旗振りをします。それぞれが、それぞれの活動をするのではなく、優先順位の高いことに対して、地域一丸となって取り組むためです。

 

 しかし、地域内で課題解決できないこともあるので、その場合は、‘行政等への提言’をしながら、課題解決につなげていきます。人口減少が進むと‘地域資源(ヒト、モノ、カネ含む)’が限られてくるため、いきあたりばったりで事業をするのではなく、事業の根拠を明確にして、着実に成果を残していく必要があるからです。