毎月さまざまなテーマで地域づくりについて考えていくコラムです。
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第1話(2019年5月号掲載)
「まち」とはかなり私的な概念であり、時と場合と人によって、その領域は大きく変化します。つまりは、その言葉が使われる機会の数だけ「まち」があると言っても過言ではありません。
では、「まちづくり」とは何なのか?それは『まちに暮らすすべての人々が、豊かな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、幸福な人生を送れるような環境を整えること』です。この場合の「環境」とは、人々の暮らしを包む全ての環境(自然、景観、社会、経済、文化等)を指します。かつては「まちづくり」という言葉は、地域開発や都市建設と似通ったニュアンスで使われていた時期もありました。その時代は、人口や産業が都市部に集中する「都市の時代」で、人が集まり、産業が集まることにより都市部の経済活動は活発になりましたが、公害問題や生活環境の悪化、コミュニティの崩壊など経済成長が生んだマイナス面も目につくようになりました。
一方、地方では、中心市街地の衰退、農林業の担い手不足、少子高齢化、若者の減少、雇用の不安定など様々な課題を抱えるようになりました。その結果、地方に住む人たちは、幸せに暮らせるか不安を抱え、「経済的豊かさ」だけではない「豊かさ」を求めるようになり、それが今のまちづくりの概念につながってきています。
衰退した地域の復興を目指す再生活動を概念とする「まちづくり」ですが、その言葉の意味は広く、私たち市民レベルでの活動は、活動規模の大小は違えど、大きく二つに分けて考えることができます。
「まちおこし」は、どちらかと言うとテーマに賛同した市民の集まりで実施されることが多く、広いエリアで活動する傾向があります。一方で、「地域づくり」は、生活する場を基盤とした地縁組織で活動します。「地域おこし」となった場合は、生活する場を基盤とした地縁組織の活動もありますが、サービス提供の視点は、まちおこしと同様に地域の外に向くことが多いです。
ちょっとややこしいですね。もう少し分かりやすく解説してみると、地域おこしは、地域の資源に着目し、それを活かしながら活動をするのですが、「うちの地域はこんなものがあります!知ってください。見に来てください」というように、サービスの提供は外に向けられる傾向が強いと考えます。一方で、地域づくりは、役のなり手がいない、ごみのルールを守ってくれない、行事の参加者が少ないなど、日常の暮らしの課題に着目し活動していく活動、すなわち住んでいる人に対して行う内向きの傾向が強いと考えます。
地域おこしは、イベントや情報発信などの事業が多く、話題や注目にされやすく達成感も得やすいです。しかし地域づくりは、とても地味で地道な取り組みが多く達成感を味わいにくいこともありますが、この地味な部分こそ地域を支える基盤であり、ここを避けては住みやすい地域とは決して言うことはできないでしょう。移住定住の取り組みが盛んに行われておりますが、住む選択の一つにコミュニティとしての住みやすさが求められ、地域おこしだけをやればいい訳ではなく、地域づくりを優先的に行いながら、地域おこしの成果を得ていく考え方が必要ではないでしょうか。
最後に、当センターでは、まちづくりは全市的で広義的な意味をもち、地域づくりは生活する場を単位とした狭義的な意味をもつと考え、用語の使い分けをします。