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(idea 2020年12月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
昭和57年頃に発足、平成12年に法人化(自然保護団体のNPO法人としては県内第1号)。現在の会員は20名ほどで、森を守り育て、自然を未来へつなげる活動に日々尽力しています。
〒021-0036 一関市山目字十二神27-1(法人事務所)
TEL 090-5513-6748 (会長:熊谷)
0191-39-2728(真湯野営場)※春~秋のみ
写真:登山道整備の様子
「天然のダム」という異名のあるブナ。どの樹木にも保水力はありますが、特にもブナは極めて高く、推定樹齢200年のブナの木が蓄える水の量は1本あたり年間8トンともいわれています。そんなブナの原生林が広がる栗駒山麓を長年見守り、自然保護活動をしてきたのがNPO法人須川の自然を考える会です。同会会長の熊谷隆さんは「一関の飲み水や水田の用水は、この原生林たちが蓄えてきたもの。その恩恵を我々は忘れてはいけない」と話します。
初代会長が須川高原温泉の社長だったということもあり、冬期休業中の豪雪によって損壊した建物の修繕や温泉の魅力を知ってもらうためのコラボ事業などが現在も続いている同会。毎分6千リットルの湯が湧き出る須川高原温泉の源泉はph2前後の強酸性で、皮膚炎や疲労回復、健康増進などの効能があるとされています。そんな天然の資源に「環境と経済は両輪」と語る熊谷さんの登山整備に同行しながらお話を伺いました。
須川岳(栗駒山の岩手県側の呼び名)や麓に広がる原生的な森林環境を後世まで守っていきたいという思いから、任意の市民活動団体としてスタートした同会。発足した昭和57年頃、当時の営林署では、建築用材やパルプ用原料の需要急増により、自然の森林を成長の速いスギやヒノキなどの針葉樹に置き換える「拡大造林政策」を打ち出し、西日本からブナ林の伐採が始まっていました。
しかし、ブナ林の伐採は、動物たちの生活に影響を及ぼします。針葉樹林には餌となる木の実が少ないため、息絶える動物や、餌を求めて人里におりてくる動物も増加します。また、人間社会においても、水源の確保が難しくなる可能性がありました。
生態系の保護を訴えるため、同会は近隣で自然保護活動に取り組む団体や個人に協力を呼びかけます。署名活動など、約10年に及ぶ活動が功を奏し、伐採計画は中止に。さらに、平成6年には県内で3番目となる森林生態系保護地域の指定を受けました。
その後も任意団体として須川の自然保護活動を続けていた同会ですが、平成12年に法人格を取得します。NPO法人を選択した理由について熊谷さんは「実働を伴う自然保護活動は、行政にも民間企業にもできない非営利活動だから」とし、法人化後は遊歩道の整備や草刈りなどの管理作業に関する協定も森林管理署と結びました。
現在の主な活動としては、須川岳登山者の安全確保のための案内看板や登山道の修繕や整備のほか、岩手・宮城内陸地震で崩壊し、災害遺構として残る祭畤大橋周辺の環境整備等があります。また、数年前までは、旧本寺小学校祭畤分校を補修し「ぶなの森まつるべ館」も運営(現在は休止中)。子どもたちに自然の大切さや厳しさを学ぶプログラムを提供するなど、幅広い活動を行ってきました。
同会が近年力を入れているのは地元企業等と協力して原生林や須川岳を歩く研修会やツアーの企画です。発足当初から関わる会員も高齢となり、若い世代の新規加入が課題である同会にとっては、ツアーが同会や須川を知ってもらうための大事な入り口。参加者の中から、須川に興味を持ち、この周辺の特徴や動植物などを紹介しながら案内できる人材が現れることを期待しています。
季節によって異なる印象を与えるこの場所では、海を越えてやってくる渡り鳥や、季節によって生えるキノコ、植物などを何百種類と観察することができます。「人間も生物界の一員。元来、人は挑戦を繰り返してきた生き物で、今当たり前にしていることは数百年の時間をかけて積み上げてきたもの。この原生林に生きる動植物の生態系も何百年、何千年と積み上げてきたもので、簡単に人の手を加えてはいけない。この自然保護活動は、自分たちの未来の暮らしを守るための試みの1つ」と語る熊谷さんは「このブナの恵みを絶やさず、次につなげることが自分たちの宿題」と続けます。
人々に感動と癒しを与える樹齢千年以上のカツラをはじめ、多くの大木や原生林が広がるこの地の生物多様性を守り続ける同会。「基本的には人が通るところだけを整備し、原生林には手を出さない。あくまでも自分たちはお客さんで、古くから住む動植物と共存することが大事」という姿勢をモットーに活動を続けていきます。
くまがいたかし
熊谷隆さん
須川の穴場スポットや動植物のことを知りたいときは3代目会長の熊谷さんに聞けば間違いなし!今は、とある生物と須川岳の硫黄鉱山跡に夢中だとか。
A.桃李
わたなべのりこ
渡辺紀子さん
男性にも負けないほどの力持ち。日々の巡視パトロールでキノコの生育を見るのが楽しいという無類のキノコ好き。
A.山の自然大スキ
「平成の名水百選」に選ばれた「須川岳秘水ぶなの恵み」は、栗駒山からの天然の湧き水として古くから親しまれています。
須川高原温泉に流れる温泉の温度とphを毎日源泉から計測しています。源泉の摂氏温度は51度とちょっと高めです。
「須川散歩」や「スノートレッキング」などのツアーや研修会を企画し、市内外の人へ須川の魅力を発信中。
登山をする際の注意事項やルート案内、高山植物、動物の紹介などをしています。どうぞお気軽にお立ち寄りください。