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(idea 平成31年4月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
平成28年に住宅型有料老人ホームを開設。「介護・看護・医療」を中心とした事業を通じ、地域に愛され、多様な形で社会貢献に寄与することを目指しています。
◆住所:〒021-0002 一関市中里字荒谷8-1
◆電話:TEL:0191-21-5550
NPO法人あゆみ(以下「あゆみ」)の理事長をしている杉浦秀次さんは元々東京都出身で、6代続く実家の日本料理店を継ぎ、経営者・職人として腕を振るっていました。そんな杉浦さんに、奥様のご両親(一関市在住)が事故に遭い、介護が必要な状況になるという突然の転機が訪れます。決して簡単な決断ではありませんでしたが、話し合いの末、店は甥に任せ杉浦さん夫婦が一関に移住するということに。
こうして一関で暮らすことになった杉浦さんは、新しい暮らしの中で、親の介護のこと、自分はよそから来た新参者であることなどを冷静に受け止め、逆にヨソモノ目線で一関の風習や、意識、ニーズを学ぼうと考えます。
まず介護の現場で働き始め、仕事やノウハウを学び経験を積みました。「自分が現場を経験してきたことで、介護職員の気持ちがわかることもあるし、現場を知らずして経営はできないと思う」そう振り返る杉浦さんの原点には、実家で中学生の頃から洗い場に立ち、厳しい料理人の現場で揉まれてきた経験があります。
一方では将来のビジョンも模索。少子高齢化で当面介護のニーズは続きそうな反面、供給が不足しているという背景と、次第に強まる「自らの思い描く介護のスタイルで地域の役にたちたい」という気持ち。前進を決断させたこの想いは徐々に様々な協力者を動かし、ついに平成28年、「住宅型有料老人ホームあゆみ(1号館)」の開設という形で実を結びます。
平成30年には、医療依存度の高い利用者さん向けの2号館も開設。あゆみは現在職員数約80名という規模に成長しています。
「想定外だった一関への移住。あゆみの立ち上げ。これらは単なる偶然か、それとも何かの必然だったのかふと考えることもある」と語る杉浦さんは「いずれにせよ何事も自分一人ではできない」と周囲への感謝も忘れません。
あゆみでは住宅型有料老人ホームのほか、訪問介護・訪問看護・介護支援相談室・デイサービスなどの事業を展開していますが、「私達の事業はサービス業であり、利用者様やご家族様に礼儀正しい言葉遣いと態度で向き合うことが一番という信念を持っている」と杉浦さん。その言葉通り、取材で訪れた1号館や2号館でも、職員の皆さんが笑顔で優しく利用者さんに話しかけている様子が見られました。
デイサービスのプログラムも多彩で、レクリエーション介護士1級を持つ職員もおり、「玉入れ」「空き缶積み上げゲーム」「タオル体操」など、利用者さんに楽しんでもらいながら無理のない範囲で体や指、頭を使う工夫をしています。
また、外部から歌や踊りの会の方を招いたり、季節に合わせ職員が仮装をしたり、利用者さん一人ひとりの誕生日に合わせて行う誕生日会では理事長の奥様の手作りケーキをプレゼントします。こうした様子は法人ホームページ内の「あゆみ日記」で不定期に紹介されていて、職員が交代で更新する内容からは、書き手の優しさが伝わってきます。
例えば医療・介護難民の受け皿にと、利用者さんの経済的負担にも配慮した2号館の開設。介護・清掃・厨房などの分業の仕組みづくりと、幅広い年齢(20~70代)の80名に及ぶ雇用創出。職員の所得水準の底上げと資格取得への時間的・経済的支援等。こうしたあゆみの様々な取り組みからは、NPO法人としての社会貢献への意識、そして「利用者様が安価で利用できる」「職員の所得向上」という杉浦さんの想いが伺えます。
「経営的には自分の首を絞めている訳ですが」と苦笑いしつつ「所得向上には、職員やその家族が自分の可能性やネットワークを広げ、何かの形で一関のために役立ててほしいという期待も込めている」という杉浦さん。「一方で職員には目標を決めてスキルと人間力を高めてほしいし、職員が自主性、やる気を持って『こうしていきたい』という思いに寄り添っていきたい」と続けます。
「知名度のないあゆみを信頼して選んでくれた、第1号の利用者様がいて今のあゆみがある」と杉浦さんは振り返ります。あゆみはこれからも共に歩み、共に笑っていくことでしょう。
すぎうらしゅうじ
杉浦秀次さん
環境の激変を乗り越え自らNPO法人を設立。理事長として80人の職員を束ねる。
みうらひろきさん
三浦浩喜さん
平成28年のあゆみ1号館立ち上げ当初からの職員。現在は施設長として笑顔であゆみを支える。
住宅型有料老人ホーム・訪問介護・デイサービス・介護支援相談室の機能を集約した法人の拠点施設。平成28年に開設。
「あゆみ」の名称に込めた、「覚えやすく明るく、職員が利用者様と一緒に歩いて学ばせて頂く」というの意図をロゴにも反映。
この日はみずき団子づくり。伝統行事では利用者さんが先生役になり、職員が教えられることも。学ぶ姿勢も大事にしています。
時には職員が様々な仮装で利用者さんを楽しませます。この日は「獅子舞ちゃん」が利用者さんの頭をカミカミして邪気払い。