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放課後等デイサービス「そらのわ」事業所スタッフと利用者(令和6年4月)
(idea 2024年5月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
令和4年11月設立。重症心身障がい児・者への支援と理解促進等を目的に、「ヘルパーステーション奏楽のて」「放課後等デイサービスそらのわ」を開所し、障がい福祉サービスを提供する。現在の正会員は11名、各種サービス利用者の登録数は19名。
住所:一関市萩荘境ノ神237-1
TEL:0191-34-4243 FAX:0191-34-4244
令和4年11月、「市内在住の重症心身障がい※1児・者本人及びその家族等に対して、理解を深め、デイサービス事業や訪問事業、相談支援活動に関する事業を行い、地域や関係施設・団体等において、理解の促進及び啓発活動を行いながら支援の輪を広げ、重症児等の福祉の推進に寄与すること」を目的に「NPO法人奏楽のたね」が設立されました。
同法人は、令和5年5月に「ヘルパーステーション奏楽のて」を開所し、居宅介護※2、重度訪問介護※3、移動支援※4のサービスの提供を行っています。令和6年3月からは1歳から64歳までを対象とした「日中一時支援」の提供も開始し、保護者のレスパイト(介護負担の軽減)を目指しています。
また、同年4月には、小学生から高校生までの放課後の居場所づくりや社会との交流促進などにつなげようと「放課後等デイサービスそらのわ」を開所。旧萩荘幼稚園を活用(賃貸)しています。
※1 重度の肢体不自由と重度の知的障がいとが重複した状態。
※2 自宅で入浴、排せつ、食事の介助等を行う。
※3 重度の肢体不自由者又は重度の知的障がい若しくは精神障がいにより行動上著しい困難を有する者であって常に介護を必要とする人に、自宅で入浴、排せつ、食事の介護、外出時における移動支援等を総合的に行う。
※4 屋外での移動が困難な障がい者等について、外出のための支援を行う。
法人設立のきっかけを代表理事の伊藤和美さんに伺うと、「娘の存在が大きかった」と言います。
法人名の「奏楽」は伊藤さんの長女の名前です。生後間もなくして難治性てんかんウエスト症候群と診断され、「医療的ケア※5」を必要とする生活が余儀なくされた奏楽ちゃんは、令和3年10月に4歳という幼さでこの世を去りました。
「急に日常生活が変わり、娘のケアに関わってくれた人たちとの交流もなくなり、大きな孤独を感じた」という伊藤さん。同時に「娘との生活の中で、医療的ケア児の認知度や支援先が少ないことを痛感していたので、自分にも何かできないかという想いが芽生えた」のだとか。
「娘の入院先で同室だったお母さんが『ぽけっとの会※6』の代表(千葉淑子さん)の知人だった縁で、同会とつながったり、『ミュージック・ケア※7』の活動などにも参加しました。
娘とともにそうした交流を経験していたことから、医療的ケアを必要とする人、障がいのある人とその家族のことを知ってほしい。そして、頑張っているお母さんたちを支援したいという想いが、娘が亡くなったことで膨らんできたんです」と言う伊藤さんは、令和4年6月に賛同者を集め、必要な支援の在り方を考え始めます。
同年8月から法人立ち上げのための会議を重ね、10月の奏楽ちゃんの命日に合わせて設立認証申請書を提出。11月22日、法人設立を果たしました。
※5 自宅で家族等が日常的に行う、医療的生活援助行為のこと。
※6 一関市を拠点に重度障がい児・者の地域生活を豊かにするために活動している団体。
※7 音楽を使って、心と体の発達の促進、コミュニケーション力の促進等、子どものあらゆる発達を伸ばす療法のこと。
「福祉関係の情報は、受け身ではなかなか入ってこないんです。私のようにネットワーク(交流)を積極的に広げたいというタイプの親は、親同士のネットワークで、様々な制度や施設などの情報を得ることができますが、横のつながりが薄いと、得られる情報は限られてきます。
でも、横のつながりを望まない親御さんの気持ちもわかるので、そういう方にはそっと寄り添い、助けを求められた時に助けてあげられるような法人でありたいんです」と伊藤さん。
少しでも情報が届くように、ホームページやSNSなどを活用するほか、障がい児・者を支援する団体等のイベント運営の協力・参加などを行い、周知に力を入れています。
立ち上げたばかりの同法人ですが、事業に関わるスタッフは、介護福祉士、保育士、看護師、臨床発達心理士等の資格を持つ方や障がい者支援に関わっていた方など、経験豊富な人材が揃っており、「これも千葉淑子さんから『こんな人いるよ』と紹介していただいたおかげです。改めて『奏楽のたね』はいろんな人の力を借りて育っているんだと感じました」と伊藤さんは笑顔で話します。
「子どもたちの日々のケアで『自分の時間』を諦めてしまうお母さん方に、『自分の時間を大切にしてほしい』と呼び掛けていきたい」という同法人は、重症心身障がいや医療的ケア、そしてその家族支援についての理解促進も図り、「みんなで育てていく法人」として、必要な人に必要なサービスが届けられるよう、努めていきます。
いとう かずみ
伊藤 和美さん
前職の介護・福祉サービスの経験を活かし、現場に出ることも。初めての法人運営に悩みながらも笑顔は絶やしません。
A.子育て
おのでら ひろし
小野寺 浩さん
教員時代の経験をきっかけに、障がい福祉を学びました。臨床発達心理士、児童発達支援管理責任者等の資格を保有しています。
A.ライフワークです!
オガサワラユウダイさんがデザインしたロゴ。「ソラ(奏楽)」の響きから音符を種に見立てて花を咲かせるという意味が。
重度訪問介護の利用者と一緒に本を読む様子。利用者の体調や生活環境等に合わせたサービス提供を行っています。
NPO法人心魂プロジェクトによるミュージカル(NPO法人くるりん主催)で、親たちも楽しめるようにヘルパーを派遣。
「そらのわ」スタッフ会議の様子。安全安心はもちろん、子どもたちが楽しく過ごすためのサービスを真剣に考えます。