※お願い※
記事内の写真や資料は、当情報誌での使用について許可をいただいて掲載しております。
無断での転載などの二次利用はご遠慮ください。
『おらほの昔かだり』出版記念事業での集合写真(平成23年)
(idea 2023年5月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
平成16年5月結成。毎月第2金曜日の定例研修会のほか、一関地域に伝わる昔ばなしの収集や当地域の方言への翻訳、小学校、老人福祉施設等を訪問するボランティア活動などにも取り組む(コロナ禍でボランティア活動は自粛中)。現在の会員は9名。
〒021-0064
一関市山目字沢内18-2 (代表・佐藤軍治)
TEL:0191-25-4125
平成15年、中里公民館(当時)で開催された「民話・昔話語り部養成講座」。その受講者11人で結成したのが一関地域の方言による語り部活動を行っている「いちのせき語り部の会」です。
「当時私は公民館長を務めており、『この地域には多くの民話・伝説・昔ばなしが語り継がれてきたが、それが途絶えかけてきているのでは』と感じたのをきっかけに、公民館事業の中で同講座を企画しました」と語るのは、結成当時からの唯一の会員であり、同会5代目代表の佐藤軍治さんです。
自身も同講座を受講し、方言を交えながら表現豊かに語られる昔ばなしに魅了され、また、学んだことを地域に還元していきたいという思いから同会結成へと踏み切ったと言います。
多いときは15人ほどの会員がいた同会も、近年は会員の高齢化などで会員数が減少。佐藤さんは、「現在の会員の中には、家族の介護や運転免許証の返納で交通手段がないなどの理由でやむを得ず会の活動を休む人もいる。休んだ人には、その日の資料などを送付し、会の近況を共有しながら会員とのつながりが途絶えないようにしている」と、会員全員が集まれる日を心待ちにしている様子でした。
一関市中里市民センターを会場に、毎月第2金曜日に行われている定例研修会では、「昔ばなしの発表」というのがあります。これは、一関地域だけでなく他地域の昔ばなしを会員が順番に持ち寄って披露し、次回以降の研修会で、一関地域の方言に「翻訳」していくなど、会員の技量向上の一助になっているほか、新たな昔ばなしの開拓にもつなげています。
取材にお邪魔した日は、副代表の福西享子さんが「節分の鬼」、同副代表の永畠睦子さんが「すず
らんのはなし」を披露。永畠さんは、「毎月、昔ばなしを持ち寄ることによって、自分の知らない昔ばなしを知ることができる。会員によって表現や話し方が異なり、その場でしか伝わらないニュアンスが楽しい」と話します。
同会では、平成23年に『いちのせきの伝説・昔話 おらほの昔かだり 第1集』、平成28年には「ご近所支え合い活動助成金」を活用し、同第2集を発刊しました。一関地域に伝わる昔ばなしを方言に翻訳し、各本には約25話ほどが収められています。
佐藤さんは、「本にすることにより、語り部とはまた違った方法で当地域の方言を知ることができる。第1集、第2集に載せきれなかった一関地域の伝説・昔ばなしがまだあるため、第3集もつくりたい」と今後の目標をにこやかに語ります。
佐藤さんが「今でも印象に残っている」というのが、「骨寺村荘園交流館(若神子亭)」を訪れていた県外の大学生たちに語り部をした際の出来事です。
最初は何を言っているか分からず、つまらなさそうな様子で昔ばなしを聞いていた大学生たちでしたが、佐藤さんが話す方言と表現力で、徐々に昔ばなしに聞き入っていき、最後は笑顔をこぼしながら楽しんでいたのだとか!
佐藤さんは、「あの時の快感を今も忘れることができず、私にとっての原動力にもなっている。関東から訪れていた団体に語り部をした時には、悲しいお話ではないのに、泣きながら話に耳を傾ける人がいた。昔ばなしの底辺に流れる『人間のやさしさ』がその人の心に届いたんだろう」と、昔ばなしが心に響いた瞬間を振り返ります。
図書館や小学校、地域のサロン、老人福祉施設等に行き、語り部の活動を活発に行っていた同会でしたが、コロナ禍では自粛や中止が相次ぎました。
また、長年交流を持ち続けている「花泉語り部の会『いずみの里』」との研修交流会や、昔ばなしや民話などが発祥された地を訪問する「歴史探訪の旅」も令和1~4年度は中止に。
佐藤さんは、「少しずつコロナ禍前の生活に戻りつつある。声がかかれば、どこにでも語り部に行きますし、他地域の語り部の団体とも交流を持っていきたい」と今後への意欲を見せます。
一関地域に伝わる民話・伝説・昔ばなしを後世に残したいという思いから結成した同会は、結成から19年目を迎えます。語り部を通し、懐かしさや楽しさとともに、先人の暮らしや歴史などを伝えてきた同会は、これからも一話一話を大切に語っていきながら、「地域の宝(=お話)」を語り継いでいきます。
さとう ぐんじ
佐藤 軍治さん
「聞き上手になって。面白くないときでも手を叩いて」という決まり文句で前置きをしてから語り部を始めるのが佐藤さんの流儀です。
A.語るよろこび 返ってくる笑顔
ながはた むつこ
永畠 睦子さん
平成29年に同会へ入会。自分の住む地域の方言が好きで、「そのままでいたい」と話します。同会にとって頼れる存在です。
A.語り継ぐ 心のふるさと
一関地域の伝説や昔ばなしなどを方言にして本にまとめました。本は市立図書館で借りることができます。
会員が輪番で持ち寄る昔ばなしを楽しみながら、技量向上につなげています。研修会後のお茶会も楽しみの一つです。
出版記念事業として、市内外で活動する語り部団体を集め、各団体の語り部を聞く機会を設けました(平成23年の様子)。
これまで多くの場所で語り部を披露してきた同会。写真は平成29年に「シニア・フェスタ2016」に参加した際の様子。