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令和4年4月開催の「せんまや夜市」の様子
(idea 2022年5月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
一関市千厩町の4つの商店街で開かれる「せんまや夜市」の企画運営を行う。昭和57年、地元商店会の有志を中心に緩やかに組織化。企画広報係(企画立案、広報)と会計係を設け、4月から10月までの第2土曜日(8月は14日に固定)に開催する夜市を切り盛りする。出店店舗等は随時募集中。
大型ショッピング店の進出や、昭和54~56年の北海道・東北の冷害の影響もあり、昭和後期には全国的に商店街の売り上げ低迷が続いていました。千厩町の各商店街でも、「今日も売れなかった」とシャッターを閉じる光景が当たり前となりつつある日々……。そんな中、愛宕商店会の中で上がってきたのが「昼売れないなら夜売ろう」という声。これが「せんまや夜市」の原点でした。
昭和55年、千厩町千厩の愛宕商店会有志を中心に開催した「あたご夜市」から始まった「せんまや夜市」の歴史ですが、農家や果樹園に声をかけるも相手にされず、参加すると言いながら当日来ない業者もいるなど、散々なスタート。翌年は愛宕地区で発生した大火で開催自粛。3年目は隣接する「千厩新町振興会」と共に実行委員会を結成し「せんまや夜市」として開催するも、いまいち盛り上がりにかける結果に……。
規模の小ささに原因があると考え、「せんまや本町通り振興会」、「四日町振興会」にも参加を促すと、最長で1・5㎞の歩行者天国となり、月に2回開催するなど、「せんまや夜市」は徐々に盛り上がりを見せていきました。
規模の拡大で来場者は増えた半面、様々な課題が。まず向き合ったのは、夜市開催エリアの中央に位置する本町通りに来場者が集中してしまうという現実。当初からの出店者にお叱りを受ける中、各商店会の特性を活かした構成にすることで来場者を分散・周遊させる作戦に。空き地が多い愛宕・新町には、地元にはない珍しい業種を出店させるなど、全体のバランスを考えるようになりました。
次に頭を悩ませたのが「子どもたちが夜遊びをするようになってしまった」という学校からの電話。同様に、夜間に歩行者天国を行うことによる不満(歩行者天国エリアに事務所を構える企業への弊害や、騒音)も聞こえてくるようになっていました。
課題に向き合う中で見えてきたのは、「商人を中心とした実行委員会であるがために『売る側目線』になっており、お客さんや地域住民に寄り添えていなかった」ということ。改めて夜市の在り方を考え、「『物を売るだけの夜市』から『楽しい夜市』へ」転換を図ることを会員間で共有。お客さんが楽しめるイベントを第一に考え、買い物は二の次としていくことにしました。
地元の小学生からは「夜市は宝物」という声が上がっており、同会会長の伊藤周平さんは「せんまや夜市は『月に一度の公認夜遊びの場』として、先生や地域の大人が見守りながら、子どもたちに千厩の魅力として発信する場にしていきたい」と語ります。
10周年を迎えた平成3年、夜市を開催している東日本エリアの商店街に声をかけ、「東日本夜市サミット・シンポジウム」を開催した同会。また、その頃には「せんまや夜市」の存在が地域外にも知られ、全国から視察が来るようになっていました。その際に驚かれるのが実行委員会形式での開催ということ。全国的には商工会が主体であることが多いため、「商工会も行政もわき役に徹している姿に驚きを感じるようです」と、事務局顧問の小野寺維久郎さんは誇らしげに語ります。
現在は国道456号線の新町・本町商店街エリア約500mを歩行者天国にして実施している夜市。街頭には前日から「千厩夜市音頭(昭和60年に公募したもの)」が流れ、ワクワクした気分を作り上げてくれます。
商店街の店舗では夜市に合わせたセールやイベントなどを行い、町内外から多い時で100店舗以上が路面に出店。開催月に合わせた恒例企画もあり(8月の「燈立」や10月のハロウィン等)、歩行者天国の通りは老若男女でにぎわいます。地元の小中高生が友達同士で楽しむことができる数少ないイベントでもあり、「子どもたちには千厩に夜市があると自信をもってもらいたい」と語る伊藤さんは、「今後は若い人たちに実行委員会の中心を担ってもらい、幅広いコネクションで回りを引き込んでいくことが大切」とも続けます。
コロナ禍で2年開催を見合わせてきましたが、令和4年4月より再開した「せんまや夜市」。話し合いを大切にしながら歴史を積み重ねている同会の活動は、地域住民にとっての「生きがい」と「思い出」、そして地域への「愛着」を創り出しています。
いとう しゅうへい
伊藤 周平さん
地元へのUターンを期に夜市にかかわるように。平成29年12月から8代目会長に就任し、子どもたちの「宝物」としての夜市を守り続けています。
A.町づくりは心づくり
おのでら いくろう
小野寺維久郎さん
実行委員会設立当初から夜市に関わっており、現在に至るまでの紆余曲折も見てきました。本町商店街で「小野久スポーツ」を営んでいます。
A.一生の仲間
主要企画が毎回異なるため、毎回(月)チラシを作成し、千厩・川崎・藤沢地域に全戸配布。あえてテイストは変えません。
「新町JaJa馬プラザ」の特設ステージでは音楽ライブが恒例。様々な団体・個人が参加(披露・演奏)します。
8月の夜市だけは14日を開催とし、「燈立」を行います。初盆を迎える家の人がこの行燈を持ち帰るのが夜市の慣例です。
平成9年に登場した夜市キャラクター「せんたくん」「まやちゃん」。夜市会場には不定期出没!子どもたちの人気者です。