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令和6年度「春の山野草展」でのディスプレイ展示。
(idea 2025年3月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
平成20年発足。室根地域を中心に山野草の愛好家が集い、山野草展の開催などによる地域振興を図るとともに、会員間の交流や山野草等に関する研修機会も提供。令和6年度には一関市民憲章推進協議会表彰を受けた。
住所:一関市室根町折壁字大里106-2
TEL:090-4558-8927(会長:村上)
「見る人によっては『オライの田んぼで踏んでっと』と言うような草花だったりする。でもそれを鉢に入れるとこれだけきれいになるんだよ、というのが、山野草の楽しみ方の一つですね」と微笑むのは、「むろね山野草の会」3代目会長の村上義一さんです。
村上さんの案内で見学させていただいたのは、毎年5月に2日間開催される同会のメイン事業「春の山野草展(一関市室根市民センター会場)」。令和6年は、同会会員のうち18名281点の出品があり、各日約20人の会員がスタッフを務め、来場者を出迎えました。驚くべきはその来場者数。毎年、約800人(2日間累計)が訪れ、千人を超えた年もあったとか。
県外からの来場者も多く、その理由について「出品数の規模ではなく、『ピッとくるものがある』らしい」と村上さん。その要素と言えるのが、同会がこだわる「化粧鉢で飾る」という見せ方です。2階の会場内には大小様々な山野草が展示されますが、その全てが趣深い器に植えられています。瀬戸物(お猪口や小鉢等)や石、木材など、アイディアやセンスが光るものばかりで、山野草の知識がない人でも楽しむことができます。
「『きれいに見せよう』ということにこだわっている。こうした展示会の際にみんなと切磋琢磨することで、自然とセンスが良くなり、飾り方を褒められることも多いです」と語る村上さんの言葉通り、この日も「素敵ねぇ」という来場者の声を何度も耳にしました。
来場者を驚かせるものにもう一つ、ロビーに作られる「ディスプレイ展示」があります。「望郷の群舞」と題した展示で、初代会長の佐藤智さんが毎年設計を行い、男性会員らを中心に2日がかりで作り上げていきます。
メインになるのはサクラ草やクマガイ草で、その周囲にコケを敷き詰めます。そこに石や木材、ミニチュアの古民家など、会員が様々な材料を持ち寄り、古き良き室根の風景を再現。令和6年は大きな池が作られ、本物の錦鯉が泳いでいたので驚かされます。
なお、ディスプレイ展示に使用したコケは、村上さんを筆頭に「コケ玉」に活用。市民センター等に依頼され「コケ玉づくり講座」の講師を務めるなど、活動の幅も広がっています。
同会が発足するきっかけとなったのは、室根公民館(現室根市民センター)の館長(当時)で現在は同会副会長の小山光正さんが、自身や知人(大東町)の山野草を公民館に展示したことでした。何度か展示を行うと、展示を見た人たちから室根の山野草愛好家情報が集まるように。同時に愛好会立ち上げの機運が高まり、平成20年4月25日、13名の愛好家で会が発足したのです。
同年、同会として第1回目となる「春の山野草展」を開催。翌年からは公民館との共催となり、「望郷の群舞」もスタートします。また、公民館や小学校の庭木剪定作業、室根山の野草保護活動などの地域貢献活動も行うほか、各種講座の開催、移動研修等、様々な活動に取り組んできました。
会員の成長により、当初行っていた会員向け講座の需要が減り、「その分、山野草展で勉強し合う」という同会。副会長の吉田光子さんも「会の発足によって、『誰かに見せたい』という気持ちが出てきました。同じ花でも、人によって咲かせ方や飾り方が違うので、本当に勉強になります」と、山野草展の大切さを語ります。
平成29年に会員数は48名に増え、『むろね山野草の会 創立10周年記念誌』を発行。10年の歩みをまとめました。その後、55名まで会員が増えた時期もありましたが、会員も高齢化し、現在は28名。「他地域を見ると、解散したり、活動が縮小したりする山野草の会も多い。当会は最盛期に比べれば会員数は減りましたが、新入会員もいます。また、会員の半数が女性というのも珍しく、そのおかげで展示会も盛り上がっています」と、村上さんは誇らしげに語ります。
この日も、山野草の販売コーナーでは女性陣が明るく元気に接客。自分たちが作ったコケ玉を販売しながら「この売上を活用して、みんなで研修に行くのが楽しみ」と笑います。
身近な草花を「いかに愛でるか」を楽しむ……。一つひとつは小さな作品ですが、横のつながりで大きな作品となり、地域内外の人たちに癒しを提供していきます。