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「書き納めの会」の様子(令和3年12月)
(idea 2022年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
平成10年5月発足。毎週水・日曜日に日本語教室を開講し、在留外国人(フィリピン、中国、ベトナムなど)の日本語学習を支援。同会の名称には、「YOU(あなた)」「友」「遊」「優」などの意味が込められている。現在の会員は12名。
〒021-0881 一関市大町4-29 なのはなプラザ4階(「一関市国際交流協会」経由)
TEL:0191-34-4711(同上)
平成31年4月、外国人の日本在留資格に「特定技能」が創設されました。人手不足の産業分野において、即戦力となる外国人を受け入れるための資格であり、日本へ入国する外国人は今後も増加していくと予想され、当市にも800人以上の在留外国人(以下、外国人)が居住しています。
一方で、「受け入れ側の体制はどうでしょう。当一関市でも多文化共生を推進していますが、一般市民が外国人と交わる機会がまだまだ少ないため、どこかお客さんとして見てしまっているところが。本当の意味で多文化共生を推進していく必要があると思います」と語るのは、「ゆうの会」副代表の熱海アイ子さんです。
「一関市及び近隣に在住する外国人とのより良い共生を目指す」ため、平成10年から「日本語学習の支援」を主軸に活動を始め、現在は週に2回、外国人向けに日本語教室を開催している同会。長年に渡り、当市に暮らす外国人を支え続けてきた同会の活動と、その活動を通して見える課題を伺いました。
中学生の頃から英語が好きで、外国に興味があったという熱海さんは、30代の頃から「一関ユネスコ協会」に所属し、様々な国の人々と交流をしていました。
平成7年頃、同協会の活動で交流のあった外国語指導助手(ALT)に「日本語を教えてほしい」と頼まれます。快諾した熱海さんですが、いざ日本語指導のテキストを見ると「動詞などの文法をどのように伝えたら良いか悩んだ」と言い、外国語として学ぶ日本語の難しさを痛感します。
そんな折、偶然にも岩手県国際交流協会が「日本語ボランティア養成講座」を開講することを知り、ALTへの日本語指導を続けながら同講座を受講。外国人に日本語を教える上で必要なスキルを学ぶにつれ、「日本語が理解できずに困っている外国人は少なからずいるはず。このスキルを活かした支援ができたら」という思いが熱海さんの中で膨らみます。
平成10年5月、熱海さん同様の想いを抱く5人で「日本語学習の支援」を主軸とする同会を発足。当初は週に1度、平日夜に開講していた日本語教室ですが、ALTや企業の労働者として雇用される外国人だけでなく、国際結婚の外国人も多いことを知り、昼にも教室を開講。その後、平日は仕事で受講が難しい外国人もいることを知り、日曜開催を追加。受講者のニーズに対応しています(現在は水・日曜日の昼)。
「日本語で日本語を教えるが、抽象的なものほど教えるのが難しい。また、丁寧な言葉で教えようとすると逆に相手は混乱する。『やさしい日本語』で話すことの大切さを、支援を通して知った」と語る熱海さん。「日本語教室の受講者の中には、介護士の資格取得を目指し、漢字を猛勉強した外国人もいた。合格が発表されたときには、みんなで喜んだ」と笑顔も見せます。
当市に住む外国人の中には、家族で滞在するケースも増えており、そこで必要になるのが「学校へ通う『外国につながる子ども』への日本語支援」です。日本語には「生活言語」と「学習言語」があり、前者は日常生活の中で使う言葉を指し、子どもも覚えやすいと言いますが、後者は教科書や授業で使われる言葉のため、覚えるまで丁寧な支援が必要だと言います。
同会では、そのような子どもを支援するため、平成18年頃より一関市教育委員会と連携を図り、市内の小中学校へ出向いての支援を開始。これまで支援してきた子どもたちの人数は約70人になると言い、熱海さんと一緒に学校へ出向いて支援を行っている同会の代表・鈴木宏さんは、「この場所に住む以上、日本語を学ぶことは必要不可欠です。今後も関係機関と連携をとりながら子どものサポートをし続けたい」と語ります。
日本語学習の支援だけではなく、浴衣の着付けや生け花、煎茶・冷茶の淹れ方教室など、外国人が日本の文化を体験できる事業も展開している同会ですが、今後は災害発生時に必要となる情報や、ワンマン電車の乗り方、切符の買い方など、日常生活に関わることも教えていきたいという抱負も。
外国人が「地域社会の一員」として「普通の暮らし」ができる、本当の「多文化共生」を目指し、同会は今後もその一助を担い続けます。
すずき ひろし
鈴木 宏さん
今年度から代表となった鈴木さんは、令和2年に日本語教師資格※取得。一関市国際交流協会のボランティア登録をきっかけに同会の活動に関わり始めました。
※外国語として「日本語」を教える語学教師の民間資格
A.日本社会の玄関
あつみ あいこ
熱海 アイ子さん
同会を立ち上げ、昨年度まで代表を担ってきた熱海さんは、市内外で日本語学習の支援に携わってきました。今後は鈴木さんをサポートしながら同会を支えます。
A.今できることを
年末に行う「書き納めの会」では、外部講師を招き、筆などの使い方を学んだ後、自分の思う言葉を書き記します。
年始に行われる正月行事では、日本の「福笑い」を体験。参加者同士が交流しながら、一つの作品に仕上げていきます。
日本語学習の一環として、ゴール地点の写真だけを渡し、道行く人に日本語で尋ねながらゴールを目指す企画を昨年度初開催。
現在25人ほどの外国人が登録する日本語教室では、テキストを使用しながら受講者のレベルに合わせて学習支援を行います。