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今年4月に開催した「毛刈り見学会」での一枚
(idea 平成30年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
耕作放棄地の保全と地域振興を目指して平成28年に15人の地元有志で立ち上げた「下大桑ヒツジ飼育者の会」さん。萩荘の下大桑地区を羊肉の産地にし、全国から人が訪れる観光地にする夢を頭に描きながら、日々活動や研究に励んでいます。
「始まりは‘地域の耕作放棄地をどうするか’という課題がきっかけでした」と話すのは、今回お話を伺った事務局の桂田勝浩さん。下大桑地区には34戸の農家が暮らしておりますが、少子高齢化や後継者問題により、やむなく農業の規模を縮小したり、手を引いたりと、少しずつ耕作放棄地が増加。その耕作放棄地を活かし、且つ住民の所得向上に繋がる取り組みはないかと模索する中で、羊の飼育を思いついたのです。
羊は草を食べ糞をし、歩くことで土を柔らかくしてくれます。一関は羊の飼育に適した気候であり、国産ラム肉の需要の高まりや、補助金の対象になること、ILCの誘致で諸外国から人が来日した際、どの宗教でもラム肉は食せることなどに着目し、耕作放棄地を羊の牧場に変え、有効に保全しながら地域振興を目指そうと目標を掲げました。
平成29年、地域の方から借り受けた耕作放棄地に「羽根橋ヒツジ牧場」を開設し、前年に購入していた雄1頭と雌5頭を放牧。羊の飼育経験がなかった会員の皆さんは、休耕田を活用し先に牧羊に取り組んでいた奥州市江刺区の牧場に出向き、餌の与え方や習性、交配の仕方等の知識を身に着けました。
続けて新たに12頭を購入し、秋には交配にも成功。150日の妊娠期間を経て平成30年3月に初めての出産を迎えました。獣医さんに教わりながら産道に手を入れ、子羊が引っ張り出された瞬間は小屋全体が驚きと喜びに包まれたそうです。
その後も立て続けに5頭の子羊が産まれ、羊は順調に増加。順調に羊が増え牧場が手狭になったため、5月には地元企業から土地を借り受け、2つめの牧場となる「山田ヒツジ牧場」を整備。牧場づくりの際は、会員のほか、羊の飼育に興味がある方や畜産を学びたい若者など20人のボランティアが作業に協力し、DIY感覚で牧場づくりに勤しみました。
世界で3千種あるといわれている羊の種類ですが、羊毛専用の品種、搾乳専用の品種など種類はさまざま。会で飼育している羊は全て、食肉に適した英国産の‘サフォーク’という品種ですが、最近は肉だけでなく、羊毛を活用した動きも。下大桑の女性で組織する「フェルトの会」では、草木染めした羊毛でブローチやヘアゴム等の小物を作成。羊毛に付加価値をつけ販売することで、産業にしようと胸を膨らませています。
今後について桂田さんは、「まずは地元のイベントに参加し認知を広げ、多様化する市場のニーズに応えられる美味しい羊肉をつくりたい。将来は、地区一帯に牧場や公園、パン工房などを集め、福祉施設や市内飲食店等と連携する‘循環型農業’をテーマにした観光農園をつくり、各地から人が訪れる賑わいの場にできれば」と夢を語っていただきました。
飼育小屋で飼われている子羊。人慣れしており、愛らしい声と表情で近寄ってきます。