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(idea 2021年10月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
昭和57年結成。一関市千厩町・千厩地区「北ノ沢集落(自治会)」のバックアップを受けながら、創作太鼓の演奏を行う。6名の大人メンバーのほか、毎年約10人の「千厩八幡太鼓ジュニア」が活動中。
※同会への連絡は千厩市民センター(0191-52-2309)もしくは下記番号へ
TEL:0191-52-3699(会長:小野寺安)
「千厩町農村環境改善センター」から聞こえてくる太鼓の音。「千厩八幡太鼓」は千厩町千厩地区の北ノ沢集落の青年会(当時)が、「千厩夏まつり」で太鼓を演奏していたことに由来します。夏まつりのためだけの演奏ではなく、通年の活動をしていくことで、地域おこしにつなげられるのではと、有志が集まり、昭和57年に結成。集落内にある「北ノ沢八幡神社(※本殿は県指定文化財)」にちなんで「千厩八幡太鼓」と命名しました。
集落としてもこの活動を後押しすべく、「千厩八幡太鼓保存会」という後援組織があることも同会の特徴。集落(現在は自治会化)の構成員が会員となり、活動費の捻出などに協力してきました。
平成19年からは、子どもたちの健全育成の一助にと、小学生を中心とした「千厩八幡太鼓ジュニア(以下、ジュニア)」の活動もスタート。「千厩夜市」や千厩地区まちづくり協議会が開催した「アンブレラスカイ」など、地区内外のイベントにも積極的に出演、イベントを盛り上げています。
「ジュニア」の練習は毎週木曜日の夜に行われており、ジュニアコーチの小野寺寿さんと事務局長の菊地稔さんの音頭の元、子どもたちが演奏。子どもの演奏とは思えないその迫力に圧倒されます。
約1時間、休憩を挟みながらも集中力が途切れることなく、勇ましい表情で演奏を続ける子どもたち。主に小学生が対象の「ジュニア」ですが、学年や年齢関係なく、演奏の良し悪しをみんなで指摘しあいます。また、コーチの方が間違えてしまい、子どもたちから一斉に指摘が飛ぶ場面も……!
地区の大人と子どもが、程良い関係性で取り組む様子が伺えます
「創作太鼓」を中心に演奏活動を行う同会。演奏する曲目は全てオリジナルの作品です。設立当初に制作した作品は、源義経公の戦馬「太夫黒」がテーマ。『出陣』というタイトルの通り、戦いに向かう光景が目に浮かぶような、勇ましい旋律です。「ジュニア」に入ったら、まず最初に取り組む曲目でもあります。そのほか、『宇治川の陣一の谷』 『屋島の合戦』『吉祥天女』など、十数曲あるレパートリーの中には源義経公を題材にした作品が多数。
ちなみに、同会が使用している太鼓の中には、昭和61年に平泉で開催された「藤原秀衡公・源義経公・武蔵坊弁慶八百年御遠忌特別大祭」に千厩町の代表として出演することになった際、「千厩八幡太鼓保存会」が購入・寄贈してくれたものが。集落の想い・応援が詰まった太鼓が演奏のモチベーションを高めてくれています。
そんな同会は、単独での活動のほか、東磐井地区の太鼓団体と連携し、平成5年に「磐井太鼓同志会」を結成。年に一度「いわい太鼓フェスティバル」を開催しています。また、「(公財)日本太鼓財団岩手県支部」にも加入し、県連の事業にも積極的に参加するなど、他団体との交流・親睦を重ねながら切磋琢磨してきました。
平成20年には、なんと海外での太鼓演奏も!中国・開封市で行われた「菊祭り」での披露に加え、現地の小学校などで文化交流演奏を実施しました。
ジュニアコーチの寿さんは「世代間交流や文化交流などが年齢関係なくできることが太鼓演奏の魅力」と語り、会長の小野寺安さんは「太鼓を楽しく叩くことがまずは一番。そして子どもたちには活動を通して『あいさつができる子』になってほしい。コロナ禍で難しい部分もあるが、太鼓を通しての地域間交流は、『人としての成長』にもつながるため、継続していきたい」と力強く意気込みます。
活動においては「楽しむこと」を大切にしているという同会ですが、「どこも同じ」と前置きしつつ、「若手の担い手不足が悩み」と語ります。
「ジュニア」は集落外の小学生にも声をかけるため、ある程度の人数が集まりますが、「大人、特に20代は地元を離れてしまい、子どもたちに伝承できる人が少なくなってきている。約40年続けてきた活動が存続できるか不安がある」と表情を曇らせる安さん。少しでも若い人たちに魅力が伝わるよう、大人の演奏は「魅せる演奏」を意識しています。そうした努力を続けながら、「ジュニア」を経験した子どもたちが大人になって戻って来れるよう、同会は今後も「太鼓」という「居場所」を守っていきます。
おのでらやすし
小野寺 安さん
発足当時の北ノ沢集落の青年会長で、発足時から同会会長。現在は(公財)日本太鼓財団岩手県支部事務局長も担っています。
A.人と人との結びつき
おのでらひさし
小野寺 寿さん
父親が同会の結成に携わり、自身もジュニア時代から現在(コーチ)まで活動を続け、さらには子どもがジュニアとして活躍しています
A.家族のつながり
保存会から寄贈された太鼓。限られた人しか叩くことができない「大太鼓」を演奏することが、演者たちの夢です。
太鼓は「自分を表現する場」であり「子どもたちの個性を発揮する場」でもあります。定例練習会は毎週木曜日夜19時から。
コロナ禍の現在、演奏を披露する場が少なくなってきていますが「魅せる演奏」を維持するため、練習は怠りません。
「千厩八幡太鼓設立35周年」と「北ノ沢自治会設立30周年」を祝う祝賀会の様子。集落との関係性が窺えます。