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(idea2019年10月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
南小梨のシンボル「黄金山」の植林や環境整備のほか、山に親しんでもらうための交流事業も積極的に行っています。
◆住所:〒029-0802 一関市千厩町小梨字浦沢121
◆TEL:0191-52-3812(組合長:千田)
写真:役員のみなさん(「一杯清水」の前にて)
千厩、室根、藤沢にまたがり、奥州藤原氏の栄華を支えた金の産出地として知られる黄金山。千厩町の最南端に位置する南小梨地区では、明治以前から昭和20年頃まで、黄金山を馬や牛の餌、堆肥にする草や焚き木を採るための入会山(共同の山)としてきました。
その後、太平洋戦争から帰ってきた地域の若者たちは黄金山に南小梨の将来展望を求め、昭和24年に南小梨入会山農業協同組合を設立。草木を刈るだけではもったいないと杉や松、檜等の植林活動を行い、現在では所有する約100町歩の8割程が植林され、緑豊かな山となっています。
昭和60年に南小梨黄金山共同組合に名称変更し、前身の活動も含めて今年で70周年を迎える同会には、南小梨に暮らす人の約9割が加入。「環境整備等の活動には皆出てきて来てくれるのが自慢。義理堅い人ばかりだから、手当が出る活動より奉仕活動の方が参加するね」と笑顔を見せるのは組合長の千田雅勝さんと企画担当理事の尾形香さん。近年は山の環境保全のほか、交流事業などにも取り組む同組合の活動についてお話を伺いました。
昭和59年に南小梨子供会育成会協議会による手作りキャンプ場が作られ(その後、町道整備のため千厩町によりキャンプ場を新設)、東京都世田谷区との交流事業「PALPAL交流」の拠点となった黄金山。「自由に自然や動植物とふれあうことができるキャンプ場で都会の子ども達もふっとんで遊んだね」と尾形さんは当時を振り返ります。
たくさんの人が黄金山を訪れるきっかけをつくったPALPAL交流は平成30年3月で33年の歴史に幕を閉じました。同組合では「賑わっていたキャンプ場も交流事業がなくなったことで使う人がいなくなれば、いずれは南小梨のシンボルの山もなくなってしまうのではないか」と危惧し、「地主である我々が子どもたちを呼び、賑わいを取り戻そう」と、同年から市の地域おこし事業に申請し「里山づくりプロジェクト」に取り組んでいます。
平成30年度は山の日に「黄金山キャンプフェスタ」を開催。木工教室や丸太切り体験で子ども達に木や山を身近に感じてもらったほか、里山コンサートでは「千厩ワルツ」などで知られるグループサウンズ「Jack5(ジャックファイブ)」がこの日のために約50年ぶりに復活するなど、老若男女が黄金山に集いました。
今年度は一関市の元気な地域づくり事業と連携し、里山プロジェクトの一環として子ども達と留学生のキャンプ事業にも協力。以前、豪雪被害で折れてしまった黄金山の桜の木を使った箸づくりは留学生にも喜ばれました。他にも年度内には森林観察や木に登って間伐する枝打ち体験なども予定されており、自分が暮らす地域の山の環境がどうなっているのか、どのように管理されているのか知ってもらい、興味を持ってもらえるような企画を準備しています。
昔から「宝の山」とも呼ばれている黄金山は、金や木だけでなく、きれいな湧き水が出ることでも知られています。山頂への登山道の入り口から湧き出る名水「一杯清水」は尾形さんが一杯清水を守る会を立ち上げ、環境整備に取り組み、震災時には貴重な水源としてたくさんの人が訪れたそうです。
最近では毎月、黄金山キャンプ場の近くにある藤沢の保呂羽神社で開かれている神社の清掃活動「グッドモーニング神社with珈琲」で淹れるコーヒーにも一杯清水を届けているそうで帰りに黄金山に寄っていく人もいたり、藤沢の人達が黄金山を登る際に尾形さんがガイド役に呼ばれたりと山を共有する他地域との交流も広がってきました。藤沢の人とは「そのうち草刈した後に山頂で一緒に焼肉でもしようか」なんて話もしているんだとか。
「個人で山を管理する人は減っているし、自分の山がどこなのかもわからなくなってしまうかもしれない。林業での収入は難しい時代だが、緑を残すために山の手入れはしなくてはならない。そのためにも、まずは大人にも子どもにも山に足を運んでもらいたい」と語る千田さん。同組合では黄金山を登ってみたい時のガイドも随時受付中とのこと。豊かな緑ときれいな水、山の空気に触れてみてはいかがでしょうか。
ちだまさかつ
千田雅勝さん
30年以上活動を支える4代目組合長。「植林した木が立派に育ったので今後はどう活用するかが課題」とのこと。
おがたかおる
尾形香さん
一杯清水の保全、PRにも取り組む他、「日本自然保護協会」登録の自然観察指導員として黄金山のガイド役としても活躍中。
東磐地区技能士会の協力・指導で、木箱づくりにチャレンジしました。「黄金山キャンプ場」の焼き印を押して完成!
木の名前クイズなどを楽しみながら山頂を目指します。山頂からの絶景はぜひ自分の足と目で確かめてみてください!
黄金山の木を使った箸づくりは特に留学生に好評で「友達の分も作っていく」とたくさん作っていった人もいたんだとか。
Jack5の復活コンサートの他、民謡歌手・佐藤信子さんによる「みちのく・黄金山春秋」も披露されました。