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「いちのせき秋まつり商工フェスタ」での演奏 (令和2年)
(idea 2021年3月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
平成3年結成。自作の太鼓で組太鼓の演奏パフォーマンスを行う。市内外のイベント等で披露する演奏には固定ファンも。毎週火曜20時~、同会専用の会館にて練習中。
〒029-1202 一関市室根町矢越字山口146-8(会館)
TEL 080-6001-4606 (会長:小山)
「ちょっと分かりにくい場所に会館があるので……」と案内されたのは、矢越山山中の林道に突如現れた一軒家。隣の民家まで車で3分ほどの距離があります。重機で山を切り拓き、自力で建てたというその建物は、「室根創作太鼓の会 鼓」専用の会館。同会副会長の三浦吉郎さんが住居兼作業場として活用しながら守っています。
中に入るとさらに驚きの光景が。防音資材が張り巡らされた壁面にはダンススタジオさながらの大きな鏡が2枚。その横には大小様々なたくさんの太鼓。圧倒されていると「太鼓は全て三浦さんの自作なんですよ」と会長の小山賢也さんに教えられ、さらに絶句……。
「太鼓は私の人生そのもの。生きた証です」と微笑む三浦さんを師と仰ぐのは三浦さんと二回り以上年の離れた3人の若者たち。産休中のメンバーと三浦さんを合わせても現在はわずか5名の会員ですが、約30年のこれまでの活動には様々なドラマが。「太鼓は生活の一部」と全員が語る同会のこれまでとこれからを伺いました。
郷土芸能としての「打ち囃子」が複数の地区や集落に伝わる室根地域ですが、逆に言えば「太鼓=打ち囃子」であり、和太鼓を主体にした「組太鼓」「創作和太鼓」のイメージはあまりなかったのだとか。そんな中、昭和50年前後、創作和太鼓が全国的に流行。三浦さんも創作和太鼓集団「佐渡の國鬼太鼓座」の楽曲を耳にします。
「聴けば聴くほど魅了された」という三浦さんは数人の仲間と「野岳太鼓」という創作和太鼓団体を立ち上げます。音拾いから始め、フォームも分からないままに独学で練習を行なおうとしますが独学に限界を感じ、昭和60年、仲間4人と佐渡に向かったのです。
見知らぬ佐渡の地で、当てもなく「鬼太鼓座」の拠点を探しますが「誰に聞いても分からなかった」のだとか。しかたなく自力で捜索していると、とある廃校から太鼓の音色が…!そこにいたのは「太鼓芸能集団 鼓童」として再出発した元「鬼太鼓座」のメンバーたちでした。
この執念の出会いを機に、三浦さんたちの創作和太鼓への情熱が急加速。思い切り太鼓を叩ける環境が欲しいという一心で会館の建設を決め、太鼓も自力で作り始めます。大工ということもあり、平成元年、会館が完成。その後も「鼓童」との接点を持ち続けながら、平成3年、方向性を同じくしたメンバーで改めて「室根創作太鼓の会 鼓」を結成したのです。
現代表の小山さんが加入したのは中学1年生の時。「やんちゃを見かねた親に連れて行かれた」のがきっかけでしたが、初見で心を奪われ、すぐにのめり込んだのだとか。「授業中も腿の上でリズムを刻むくらい」大熱中した小山さんは、高校卒業後も迷わず地元就職の道を選択します。
その背中を見てきたのが現在高校生の菊池兄弟。小学生の頃に加入し、兄の宥喜さんは今年高校卒業ですが、やはり地元就職の道を自然に選択していたのだとか。一見大人しそうな兄弟ですが、演奏が始まると一変。観客に向けても積極的に声をかけたり、盛り上げるようなパフォーマンスを挟み込みます。「観客を見ながら演奏し、観客と一緒に楽しめることが魅力。本当の自分を表現できる」と、その魅力を語ります。
同会が一躍注目を浴びたのが平成30年、室根神社特別大祭共催事業の一環で企画されたプロドラマーとのコラボ演奏。共通の知人の引き合わせにより、「ザ・ブルーハーツ」のドラマー梶原徹也さんと同会の演目「海潮音」で共演したのです。さらに、この共演の取材に来ていたNHKの関係者に「室根大祭に関係する曲など地元に根付いたオリジナルの曲を創りたい」と小山さんが話したことがきっかけで、オリジナル曲を創るまでのドキュメンタリー番組の制作が決定!梶原さんもアドバイスをくれるなど、思わぬ後押しを受けながらできた曲が「継(つなぐ)」。室根大祭で神輿を先導する笛のメロディーがベースになっています。
20代の小山さんが次世代の後継者としてバトンを受け取りました。「中高生にとって和太鼓がギターと同じレベルの選択肢になれば嬉しい」と語る小山さん。「継」承した太鼓への情熱をさらに次の世代へ繋いでいきます。
おやまけんや
小山賢也さん
28歳にして太鼓歴は16年!新会長になった矢先のコロナ禍で「正直大変」と言いながらも、新たなネットワーク構築も視野に奮闘中。
A.自己表現
きくちゆうき
菊池宥喜さん
自他ともに「本番に強い憑依タイプ」と言う菊池さんは高校3年生。卒業後は市内企業へ就職し、同会での活動を続けます。
A.繋ぐもの
大きな鏡を目の前にしての練習。音だけでなく、動作も重要なパフォーマンス要素なので、常に観客目線を意識します。
センスと経験が問われるという大太鼓ももちろん三浦さん手作り。会員が増えれば大太鼓の出番が復活するはず……!
「最高だった!」とメンバーが口をそろえる梶原さんとの共演。会場は大盛り上がりで、貴重な経験となりました。
会長の世代交代を機にフェイスブックを始めるなど、発信力を強化。若い世代の目にも留まるように試行錯誤。