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(idea 平成26年2月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
会 長:佐藤賢吉さん
事務局:皆川春男さん
連絡先:〒029-3522 一関市藤沢町藤沢字葉山平28
電 話:090-4314-0328
一関藤沢町の中心部から、国道456号線を1.5km程南下した場所にある白藤交流館内。1月上旬のとある夜、館内に響く太鼓やチャッパの賑やかな音に合わせ、地域の子ども達が郷土芸能発表会に向けた神楽の練習を行っていました。今回は、子ども達に指導を行い、本郷神楽を伝承する本郷神楽保存会の活動と歴史をご紹介します。
同保存会は、7代目会長である佐藤賢吉さんを中心に、本郷地区在住の20代から80代の男女11名の会員で構成され、全員が本郷神楽を踊り指導することができます。昨年は、藤勢寺や葉山神社の例大祭、藤沢農業祭や幕治め(忘年会)等6回以上も神楽を発表。今ではすっかり地域に定着した本郷神楽ですが、その起源は明治時代に遡ります。
今から95年程前、瑞山神楽を習得した加藤勇八氏が旧室根村浜横沢地区に神楽を伝え、それを習い伝承したのが、保存会の初代会長である佐藤留五郎さんです。その後、初代に続き二代目、三代目と会長が変わっても、本郷神楽の歴史は途絶えることなく、保存会員の手により代々受け継がれてきました。
今のような便利な記憶媒体が無かった当時、神楽の記録を残す唯一の手段は文字に著すこと。「先代の先生が書いた本です」と見せていただいた本には、漢文のような見慣れない文字で、複雑な振り付けや台詞の一切が示されており、紙の質感や文字の形からは時代を感じました。本に記されてある文章は読みやすいよう現代文に直しますが、神楽独特の節回しや言い回しがあるため、むやみに言葉を変えられません。
また、「踊りを教える時は文字や口で説明するより、目で見た方が伝わりやすい」と、舞台発表した踊りは映像としてDVDに記録。「昔撮ったビデオの映像を編集しDVDに移す作業は、半日かかりました」と言う佐藤さんの言葉からは、代々積み重ねてきた本郷神楽の歴史を未来に継承したいという意志の強さを感じました。
本郷神楽の特徴は神舞(神様に奉納する舞い)の多さで、7つもの演目が継承されている神楽は市内でも非常に稀とのこと。さらに、もうひとつの特徴は新刀を使う演目があることです。「天叢雲の宝剣由来記」という演目では、暴れる大蛇を新刀で切りつけた際に、大蛇の体から吹き出す赤い糠を見た観客は「本物の刀だ!」と驚くそうです。
取材時は、1月12日に行われる「第32回藤沢町子ども郷土芸能発表会」の練習が行われていましたが、この発表会は元々、本郷神楽保存会の活動がきっかけで始まりました。33年前、50名程の小学生が地域の方々の前で神楽を発表したところ、「来年からは藤沢町が音頭をとって続けよう」ということになり、町内にある複数の民族芸能が参加する程にまで規模が拡大。大会当日は、体全体を使い躍動感溢れる見事な舞を披露。子ども達が練習の成果を見せようと一生懸命踊る姿に、強く心を打たれました。