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令和3年度総会の集合写真(令和3年9月撮影)
(idea 2021年12月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
平成29年11月発足。一関市内の山林から切り出した間伐材や工事伐採材等の集材、加工を行い、地域の地産地消エネルギーとして資源循環させる活動に取り組んでいます。現在の会員は43名(令和3年9月10日現在)。
〒021-0803 一関市南十軒街11-2
TEL:070-4345-2244(専用電話) FAX:0191-23-5710
一関市の森林面積は78919haと、市の総面積の62.8%を占めていますが※1、木材価格の低迷や林業労働者の高齢化、松くい虫の被害拡大などにより、森林所有者の林業に対する意欲が衰退し、間伐等の整備が遅れている森林が増加しています。
※1 令和元年度版「岩手県林業の指標」より
間伐を行わないと、樹木同士の成長を阻害するだけでなく、太陽光が差し込まないことで土地がやせ、根をしっかり張ることができないため、土砂崩壊等の災害が発生しやすくなります。また、間伐を行っても、その間伐材が山にそのまま残されることも。間伐材を林外に搬出するには費用がかかり、その費用に見合った収入を得られないという現状が背景にあります。
そうした資源を有効活用し、当市の豊かな自然環境を次世代に引き継ぐべく活動しているのが「森林資源を活用する一関市民の会」です。会長の千葉康生さんは、「昭和40~50年頃に植林した木は今が伐期。だが、今の住宅は鉄筋コンクリート造りが多く、木を使うことは少ない。暖房も昔のように木炭や薪を使うことがなく、電気・ガス・石油で済む。今の子どもたちが木の温もりや雰囲気、香りを感じる機会が減っているのはとても寂しい」と語ります。
当市では、平成28年10月に県内初となる「一関市バイオマス産業都市構想※2」の認定を国から受け、市内に豊富に存在する木質バイオマスを活用しながら、資源・エネルギー循環型のまちづくりを推進していますが、より一層、木質バイオマスを地域に根ざしたものにすべく、行政と一緒に活動に取り組む市民有志を募り、結成したのが同会です。
※2 バイオマス産業都市とは、地域に存在するバイオマスを原料に、収集・運搬、製造、利用までの経済性が確保された一貫システムを構築し、地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまち、むらづくりを目指す地域で、当市は事業者や学生などからなる「バイオマス産業化推進会議」で議論を重ね、構想案を作成した。
同会の主な活動は、間伐材や支障木、工事伐採材の集材活動のほか、薪の製造・販売、市内各所で行われるイベントに出向いての木質バイオマスPR活動(薪割り体験会、薪ストーブの実演会等)など多岐にわたります。
会員は、厳美から室根まで市内各地に点在するため、どの地域に住んでいても活動がしやすいよう、活動拠点を3か所設け※3、拠点に原木を集材し、薪づくりなどを行います。また、会員の多くが農業にも携わっていることもあり、会としての活動は農閑期の10月~3月(月2回ほど)に集約。千葉さんは、「会員のほとんどが高齢だが、みんなで楽しく作業している。嫌々やっていては、会として続かない。まずは楽しむことが大事」と笑顔で話します。
※3 【厳美・萩荘地域】旧達古袋小学校敷地内/【大東・東山地域】東山町長坂字久保地内/【室根・藤沢地域】藤沢町保呂羽字栗沢地内
市と連携し、木質チップボイラーの燃料となる木質チップの原木集材にも取り組んでいる同会。会員が山林や工事現場等から切り出された木材を運搬し、市内のチップ製造業者へ引き渡します。それらを利用した木質チップは、木質チップボイラーが設置されている一関市立千厩小学校、東山小学校でも使用されるため、資源の有効活用はもちろん、児童たちの学校生活と里山再生の一助にもつながり、同会にとって誇らしい活動の1つとなっています。
千葉さんは、「山林に残されている間伐材などは、薪や木質チップとなって、私たちの生活に欠かせないエネルギーに変わる。この活動は間伐材の需要を開拓することにもつながり、将来的には、雇用の面にもつながるのでは」と期待を寄せます。
市の施策で結成され、事務局長が市の「木質資源地域活用推進員」を兼ねていたことから、事務局窓口を市役所農地林務課としていた同会でしたが、令和3年度からは事務局長の千田雅明さん宅へ窓口も移し、市民団体として独立。千田さんは、「木質バイオマスをもっと身近に感じてもらうのが自分たちの役目。薪の販路拡大やイベントへ参加するなど、これからも積極的に活動を続けていく」と今後の抱負を語ります。
地域の資源を「地産地消エネルギー」として循環させることを目標に活動している同会。今後も「市民による地域に根ざした木質バイオマスの利用」に取り組んでいきます。
ちば やすお
千葉 康夫さん
一関市萩荘の赤猪子在住。現在は自宅裏の山林を自分好みに改良中です。岩手県森林整備協同組合の代表理事も担っています。
A.あるものを最大限に使う‼
ちだ よしあき
千田 雅明さん
元々は観光関係の仕事に就いていた千田さんは、縁あって同会の事務局長を任せられることに。林業初心者として日々勉強中です。
A.楽しく継続
市内各所のイベントに出向き、薪割り体験会を実施。普段は体験できない薪割りに子どもも大人も夢中です。
オレンジ色が目立つ防護服は、チェーンソー等から体を守るために着用。背中には同会の名前がプリントされています。
各拠点には、薪棚が設置され、多くの薪が積み上げられています。薪は約2年間の自然乾燥を経てから出荷されます。
市内の道の駅、産直などに「木の駅」と題した薪やウッドキャンドル等の販売・展示コーナーを設置中(令和2年度から)!