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(idea 2021年9月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
平成26年8月2日発足。現在の会員は20 名ほどで、赤荻地区内を中心に活動中。文化財問わず、文化的・自然的に価値あるものを「歴史遺産」とし、後世に語り継いでいくための事業を展開している。
〒021-0041 一関市赤荻字宿17-4
TEL:080-1837-6740(事務局:佐藤剛一)
写真:「赤荻護國会碑」前での記念写真 ※会員以外の人も含む
市道中条外山線(工事中)付近の雑木林の中に静かに建つ「赤荻護國会碑」と書かれた巨大な石碑。日清戦争時、徴兵策を推進するために建てられたこの碑は、幕臣だった榎本武揚が題字を篆刻し、学者の大槻如電が碑文を作ったと言われています。
この碑の建つ一帯は「烏森」と呼ばれ、大正時代には笹谷・外山・宿の青年たちが集まって大運動会を開いていたことが『山目史』に記されています。
今でこそ、赤荻地区(赤荻村)の歴史を垣間見ることができる場所となった当該エリアですが、実は約7年前まで人目を浴びない、荒れ果てた状態でした。埋もれかけた歴史遺産を掘り起こすべく、地元住民で立ち上げたのが今回取材した「赤荻歴史遺産保存の会」です。事務局の佐藤剛一さんに当該歴史遺産をご案内いただきながら、会の活動について伺いました。
平成20年頃、運動不足解消のため、自宅近くの山道を歩いていた剛一さんは、密生する笹の中に、まばらにしか生えていない場所を見つけます。明らかに周りとは生え方が違うことに違和感を覚えた剛一さん。藪の中を突き進むと、自分の背丈の倍はある「赤荻護國会碑」を発見!突然現れた碑に驚き、どうしてこんな山の上に碑があるのかと様々な疑問を抱きながらも、この時はそのまま帰路につきました。
それから3年後、退職をきっかけに再び碑の元へ。すると、東日本大震災の影響か、碑が仰向けに倒壊していたのです。碑に何が彫り刻まれているか、解読はできなかったものの、その姿を見た剛一さんは「赤荻にとって大事な歴史を語りかけているのでは」と感じたのだとか。
その後、碑に関する文献や地元住民への聞き取りなどで碑が建立された背景を知り、「この碑をこのまま倒しておくわけにはいかない」という思いが強くなります。また、調査過程で赤荻地区の至るところに石碑等がが放置されている現状を知った剛一さんは、同じ思いを持つ地元住民と調査保存の活動を開始。平成26年度の「いちのせき元気な地域づくり事業」で赤荻の歴史遺産に関する調査・保存が取り上げられたことも後押しとなり、地元有志11人で同会を発足させました。
発足後、真っ先に着手したのが山道と碑周辺の環境整備でした。何十年と人が入らず、荒れ放題となっていた所を整備し、平成26年9月、地元住民を中心に現地見学会を開催。参加者からは「長年住む場所にこんな碑があるとは思いもよらなかった」という驚きの声が多数あがったと言います。
平成27年6月、かねてから計画していた碑を建て直すプロジェクトが本格始動。地元企業に復建の依頼をし、同年7月12日、お披露目会を兼ねた再建式を行いました。この日は、建碑された明治28年7月12日から数えて、ちょうど120年の節目にあたり、同会にとっても感慨深い日となりました。
同会は定期的な勉強会や山目市民センター事業への協力のほか、「歴史遺産」周辺の環境整備や見学事業の開催、地区内に伝わる風習等の調査も行っています。また、一関学習交流館に地区内の「歴史遺産」を紹介する案内板や当該遺産の周辺に標柱を設置するなど、誰もが気軽に赤荻の歴史を知ることができるような取り組みも。
案内板には、平安時代に開削されたと伝えられる用水路「照井堰」で稼働していた水車の名前と跡地18か所を一覧にしたほか、石碑や寺社、樹木などを赤荻地区の上空写真と一緒に紹介。剛一さんは、「文献には石碑などの場所を示す内容が記されているが、いざその場所に行こうと思っても難しい。いかに親しみやすく分かりやすく伝えるかが大事」と語ります。
同会が発足して7年。「赤荻地区に眠っている『歴史遺産』をなんとかしなければいけない」と勢い良く活動してきましたが、コロナ禍で事業がストップ。会員のほとんどが高齢ということもあり、一度勢いが止まってしまったことに不安を感じながらも、少しずつ事業を再開させ始めました。
赤荻の「歴史遺産」を後世に伝え・残し続けるため、今後は人材育成にも力を注ぎ、時代に合ったやり方で地元の魅力を発信していきたいと意気込む同会。「地元の歴史を伝えるのが自分たちの役目」と、誇りを持って次世代へ語り継いでいきます。
たかはしまさよし
高橋 正義さん
生まれも育ちも赤荻ということもあり、会の中でも一番を競うほどの郷土愛!今後も会の先頭に立ち、会を牽引していきます。
A.郷土愛
あべかつろう
阿部 克郎さん
郷土の歴史を調べるのが好きだと言う阿部さんは、赤荻に眠る「歴史遺産」の魅力に心奪われ、会の発足にも尽力しました。
A.温故知新
全31か所の「歴史遺産」を解説文付きで紹介する案内板は、山目市民センター赤荻分館の体育館横に設置されています。
同会発足のきっかけとなった赤荻護國会碑。高さ4m50㎝、横1m80㎝の石碑を誰がどのように設置したかは謎のまま…
今年度初めての主催事業を7月18日に開催。正慶山観音寺から経壇山までの山道には歴史を感じるスポットがいっぱい!
剛一さんがまとめた調査の記録本。知識がない方にも分かりやすい内容です。読んでみたい方はご連絡ください。