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県道の草刈りでの集合写真(令和6年)
(idea 2025年1月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
舞川地域は「舞草地区」「相川地区」に分けられ、舞川第18民区は相川地区。折ノ口(一部)、蛙沢、峠の小字があり、29世帯88人が暮らす。区長、副区長、会計、農家組合長、農業共済組合長、班長(3班)で構成される。
集落の拠点は、舞川第十八区公民館。館内にたくさんの賞状が飾られている中で、人々が山を削って道を整備している写真がありました。「この道の整備は、舞川18民区の住民でやったんです。隣接する長島とは昔からお嫁さんやお婿さんが行き来するなどの交流があり、間に山があって人が往来するには不便だった。そこで、現在の県道206号(相川平泉線)ができたと聞いています」と語るのは、区長の相川恵さん。「そういった昔話を語れる人も段々といなくなってきたので、『昔のことを後世に伝えよう』という想いから、地域に関係する古い写真を飾っています」と続けます。
舞川地域は、一関市・奥州市・平泉町の境界にある束稲山の西麓に位置し、奥州市生母、平泉町長島と合わせて「束稲山麓地域」と呼ばれ、令和5年には「日本農業遺産」にも認定。特にも同集落は山林に囲まれ、かつては住民のほとんどが専業農家でしたが、今では兼業農家が大半を占めています。
集落としては、春と秋の一斉清掃、受託している県道の草刈り、水辺の観察会、蚕の神様を祀る社(通称・白滝様)の掃除、新年会などの活動を行っています。平成14年頃には、「かつての豊かな自然を取り戻したい」という思いから、「中山間地域等直接支払制度」を活用した、「カタクリの保護や竹炭による番台川の水質浄化」「転作田を利用したマコモダケ」「タカキビの作付け」などの事業にも取り組み(当時)、平成16年に県の「中山間地域モデル賞※1」を受賞しました。
※1 現在の名称は「いわて中山間賞」。平成27年度から、県内の中山間地域において、地域の個性を活かした活性化の取り組みを行い、成果をあげている集落等に対してこの賞が授与される。
集落内を流れる番台川には、カワエビやドジョウ、ヤゴ、カジカなどの生物が生息し、相川さんの幼少期には「北上川からウナギが上ってきた」と言います。
そんな番台川を会場に行われているのが「水辺の観察会」で、平成12年頃から毎年7月末あたりに、子どもたちの夏休みに合わせて開催しています。民区内外の子どもや保護者、帰省している住民の孫なども参加しているそうで、川の一部に生け簀を設けニジマスを放流し、みんなで釣りを楽しむほか、川で捕まえた水生生物の観察も行います。
観察会を行う前には河川の泥上げを実施し、水生生物や環境にも配慮しており、川の状態や気候に合わせて小さなプールを設けて開催したこともあります。当時は1戸から数人の子どもが参加することもありましたが、現在は3戸から4人程度と民区内の少子化を感じつつ、同事業をきっかけに多世代が交流できる機会にもなっているのだそう。
中山間地域等直接支払制度を活用して約10年前に放流したカジカは、現在も見ることができます。「子どもだけでなく、大人も楽しむ観察会は、自然環境に関心を持つ大事な事業なので今後も続けていきたい」と相川さん。
番台川に棲むカジカを含めた水生生物の命のバトンは、次世代にも引き継がれ、河川愛護の気持ちを醸成していきます。
近年の集中豪雨で10か所以上の土砂崩れが発生している同集落。小規模な被害は各戸で対応をお願いしながらも、高齢者宅も多く、作業への心配は拭えません。
相川さんは、「集落の人たちも少しずつ年齢を重ねて、事業への参加者も減少傾向にあります。冬場の高齢者宅の雪かきも近隣住民で担うなど、過疎地だからこその支え合いが必要になってきますね」と、これからのコミュニティの在り方を見据えます。
以前まで公民館を会場に行われていた新年会の写真には、集落のお母さんたちの手料理が振る舞われ、お父さんたちがお酒を飲み交わすなど、楽しそうに参加する住民たちの姿が写っていました。各戸から1人以上は参加していたという新年会も、参加者は減少し、高齢化なども相まって、令和2年からは近隣への温泉旅行へシフト。コロナ禍の影響もあり、中止が続く新年会ですが、「次の年こそは」と相川さんは期待を寄せます。
会場は変わっても各戸の子どもたちも参加し、住民同士の交流づくりにもつながる新年会。どの事業においても「楽しんで取り組む」ということを大切にしている同民区では、自分たちのペースで住みよい地域を目指し、模索し続けます。
あいかわ めぐみ
相川 恵さん
1期2年目。生まれも育ちも同民区。「高校卒業後から地元を離れたため、地元に戻り屋号を覚えるのは大変だった」というエピソードも。
A.みんなで地域づくりをしています
さとう けいこ
佐藤 惠子さん
2期3年目。毎月第2月曜日に活動する介護予防教室「こぶしの会」の世話人として、区長、民生委員と会を盛り上げています。
A.みんなで笑顔をたやさない地域です
中山間地域等直接支払制度を活用して建てた標柱。同民区へお越しの際には、この標柱を探してみてください。
公民館内に飾られる写真は、自分の親やおじいちゃん、おばあちゃんが「ここに暮らしていた」という証拠を残す意味も。
番台川に親しみを持ち、自然環境の大切さを伝える「水辺の観察会」。民区住民問わず、誰もが楽しめるイベントです。
介護予防教室「こぶしの会」には、平均10人ほどが参加。取材に伺った日は、健康に関する勉強をしていました(令和6年11月)。