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令和5年度「防災研修」での集合写真
(idea 2024年1月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
奥玉字石ノ御前、熊ノ沢の一部、宿下の一部、中日向の一部、登戸の一部、物見石で構成。一関市奥玉市民センターや千厩警察署奥玉駐在所、ガソリンスタンド等も立地する奥玉地域の中心地(行政区は16区)。世帯数94戸、人口約240人。総務部、農林商工部、福祉厚生部、女性部の4部会制。
物見石山と愛宕山に挟まれ、急峻な箇所が多い奥玉地域は、令和4年9月に岩手県が新たに公表した「土砂災害が発生するおそれのある箇所」で、急傾斜地の崩壊など、複数箇所が対象とされました。
奥玉地域の中心地的存在でありながら、上記対象地に加え、従来からの「土砂災害警戒区域(土石流・地すべり)」「土砂災害特別警戒区域」等が分布するのが「中日向自治会」のエリアです。
「当自治会住民は、先人から脈々と受け継がれてきた『自らの生活は自らが守る』という自主防災意識がとても強い」と語るのは、自治会長の岩渕敏郎さん。同自治会では平成10年2月に「中日向自治会助け合い(防災)総合計画」を策定し、有事の際の伝達命令系統を明確にしています。また、その確認として毎年10月には総務部を中心に防災研修(消防機関と連携した防災訓練等)を実施、毎年50名以上が訓練に参加しています。
これまでの訓練は、計画の確認だけでなく、消火訓練や炊き出し訓練、煙体験やAED操作講習、ロープ結び教室、緊急車両の見学など、多岐に渡ります。
炊き出し訓練では、女性部、保健推進委員、食生活改善推進員が協力し、白米にもち麦を入れた「もち麦カレー」を提供するなど、食生活の改善についても学んでもらう機会につなげる工夫も。
こうした「防災活動を通した住民相互の助け合い精神、連帯の精神の構築」が、その他活動を円滑に進める要因であると岩渕さんは語り、「先人が残してくれた無形の財産のありがたさを感じる」と続けます。
「環境整備への若年層の参加が近年目立ってきた」という同自治会。各種事業は30代~70代前半を中心に行われ、60代の多くはかつての自治会青年部、30代の多くは子ども育成会の保護者なのだとか。
環境整備は1世帯1名の動員ですが、代替わりをして若者が参加した際には、その作業の始まりなどで「新たな地区の担い手」として参加者に紹介し、初顔合わせの機会にも位置付けます。
そうした世代交代が円滑に進む背景には、小学生による「中日向少年消防クラブ(以下、少年消防クラブ)」の存在が。昭和56年、地元消防団の指導で、千厩町(当時)で最も早く発足しました。令和3年3月には「消防庁長官賞」の表彰を受けるなど、自治会内外で認められる存在です。
自治会内の1組織に位置付けられ、少年消防クラブ担当の役員は保護者の中から選出、自治会行事の調整にも加わります。年3回程度の拍子木を打ちながらの火の用心啓発巡業にも保護者が同行するなど、この活動により、子どもも保護者世代も、自然に自治会活動に参加します。
また、各種スポーツ行事の選手選考にも自治会執行部・地区体協理事に加え、子ども育成会が関わります。過去にも幾度となく栄光を勝ち取り、令和5年度も「奥玉地区民ニュースポーツ大会」で優勝を飾るなど、輝かしい成績を収めていますが、なんと、その選手の半分は小学生!岩渕さんは「幼い頃から年代の垣根を超え地域活動に触れる機会が創出されることにより、私たちが幼い頃にそうだったように、中日向に生まれ育つ意義を感じ取ってもらえているものと思います」と、「担い手が育っていく要因」を語ります。
若い世代だけでなく、自治会長等の役職もスムーズに引き継ぎできているという同自治会では、年間の行事や運営委員会(執行部+12人の班長)の開催日なども盛り込んだ年間スケジュールを作成し、関係者全員で共有。事業は主管部が中心となって進めます。
花いっぱいコンクール(花壇整備)や奥玉地域の民芸大会等への参加(スコップ三味線)、手芸教室の開催など、自治会活動の盛り上げ役は女性部。女性部長を経て現在は副会長を担う藤野久美子さんは「集まる機会、場を提供していくことが大切」と、笑顔を見せます。
そんな同自治会にも人材確保に関する悩みが。10年程前から、自治会として市から4路線4㎞の歩道除雪を受託していますが、定年制の延長で、「60代で自宅にいる人」が少なくなり、除雪機オペレーターの確保が課題に。
岩渕さんは「自治会活動を無理なく後世に引き継ぐために、将来の姿を各年齢層とともに検討し、事業の整理もしていきたい」と、「身の丈に合った活動」を目指していきます。
いわぶち としろう
岩渕 敏郎さん
元行政職員で、農林部長時代に自治会役員を外れた以外は、長年自治会の様々な役で活動を支えてきました。副会長を経て令和5年度から自治会長就任。
A.思いやり
ふじの くみこ
藤野 久美子さん
2期3年目。女性部長を経て副会長へ。スコップ三味線の仕掛け人。住民の声の橋渡し役として、意思疎通がスムーズにできるように工夫しています。
A.声をかけ合い 明るい和
発足当時は20名を超えた隊員数でしたが現在は8名。少子化の影響を受けつつも、保護者も巻き込みながら活動継続中!
おにぎりの炊き出し訓練の際は「食の匠」の指導による漬物をセットにする工夫が中日向流。ケチャップライスの年も。
一関東消防署の職員を自治会館に招き、防災訓練の一環でAEDの操作講習を実施。2班に分かれ実践を行いました。
奥玉地域の全8自治会が参加し、4種目で競った令和5年度「奥玉地区民ニュースポーツ大会」は同自治会の圧勝でした!