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令和6年度「案山子づくり」の様子
(idea 2024年12月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
門崎地区に位置し、官紅の一部を含む。45世帯、119人が暮らす。6班体制。総務部、産業部、地域振興部、体育厚生部、女性部、社会環境部、高齢部で構成。
古くから砂鉄川・北上川・千厩川の合流地点として度重なる水害に悩まされてきた一関市川崎町では、抜本的な治水対策を講じるため、平成11年度より、東北地方整備局・岩手県・自治体(当時の川崎村・東山町)が連携し、上下流一貫した砂鉄川緊急治水対策事業が行われ、直轄区間が平成17年度において概成しています。
砂鉄川と北上川の合流地点に位置し、水害常襲地帯だった神平自治会もこの区間に含まれており、治水事業によって風景が一変します。田んぼの一部が堤防になったことで、ウナギやカニ、アユをとるなど、身近な存在だった砂鉄川が同自治会からは見えなくなりました。
「とりわけ周辺集落の中でも低い地域に位置していたため、影響は大きかった」と、同自治会長の藤江修さんは当時を振り返ります。住民の瀧澤政司さんも、「被害が年5~6回あった時は大変だった。各家には舟があり、舟で避難したり、門崎駅まで舟で通学し、生活をしていた」と当時の大変さを語りつつ「洪水後は土地が肥えるというメリットもあった」と、水害と共存してきた過去に思いを馳せます。
治水対策事業によって洪水は無くなったものの、内水被害が発生することはあり、これまでの水害で培われてきた住民同士の助け合いの精神が、現在もなお、生活を支え続けています。
災害の多さゆえ、隣近所との連携は今も密に行っているという同自治会。令和6年に初開催した「案山子大会」もその一つで、地域住民総出で取り組み、自治会館前の花壇に手作りの案山子を設置しました。
案山子づくりは花壇の整備と併せ、3回に分けて製作。1回目は花壇の土づくりの際に案山子の骨組みづくり、2回目は花壇の草取り作業の際に案山子の肉づけ、3回目は花壇の花植え作業の際に案山子に服を着せ、設置しました。住民が持ち寄った服を用いてみんなでコーディネートしたため、案山子それぞれに個性があり、完成した13体の案山子は花壇に賑やかさを添えました。この「案山子大会」は、自治会内の話題になると共に、他の地域の人たちからも声をかけられたり、自治会内外の交流を促すきっかけとなっています。
なお、花壇の図面作成から維持管理は「ほがらか会(老人クラブ)」が行い、定植作業などは自治会全体に声をかけ、ほぼ全戸が参加しています。
また、毎年開催する研修旅行では、目的地での研修はもちろん、休憩で立ち寄る道の駅などでも、その土地の地場産品をみんなで研究します。作り方、土の性質、肥料など、行った先々で勉強し、バスの中で共有し合うのだとか。藤江さんは「そうした知識が地域に還元されることが大切であり、何歳になっても学習したことを発表する人の笑顔はすばらしい」と、その意義を語ります。コロナ禍で休止していた時期もありましたが、令和4年度から再開し、今後も継続が望まれる、同自治会には欠かせない事業(機会)です。
人口119人のうち、中学生以下の人口が14人と、門崎地区の中でも子どもの割合が多い同自治会ですが、約15年程前から夏祭りなどの事業は参加者の減少により休止。現在は自治会員が無理なく参加できる事業が中心です。
例えば12月に行う門松作り。令和3年から始めた事業で、自治会館前に設置する門松を子どもたちと一緒に製作します。かつて門崎地区で作られていたという門松を調べ、世嬉の一酒造の門松も参考にしながら、より地域文化に近い形式を再現しています。
自治会事業の規模は縮小していても、案山子大会や門松作り等、「毎年何かをしていくという機運はある」という同自治会では、かつて行っていた交流事業(果報団子づくり等)などを再開していく予定です。
「やるとなると行動が早いのが神平自治会です」と語る藤江さん。今年度から新たに設置した「高齢部」もその成果です。定年年齢の引き上げにより、地域活動への参加者が減る中、自治会のさらなる活性化を図るため、60歳を過ぎたら自治会活動に参加するという流れを作り出しました。
「住んでいる人が元気になるような地域になるように頑張りたい」と、子どもたちや元気な女性陣、ほがらか会や高齢部など、地域の様々な主体が活躍できる地域運営を目指しています。
ふじえ おさむ
藤江 修さん
2期4年目。自治会副会長、産業部長を経て自治会長に。住み良い地域を目指し、活動を模索しています。
A.支え合い 助け合い
おやま はしめ
小山 元さん
2期4年目。総務部長を兼務。自治会の行事の取りまとめ、老人クラブの事務局も担っています。
A.協力的な自治会です
洪水時に活躍した舟。ほぼ使われることがなくなった今でも備えてあり、集落内の各家でもこの様子を見ることができます。
治水対策事業により、平成17年頃から風景が大きく変わった集落では、水害の歴史や文化を後世に語り継いでいきます。
川崎から東山に向かう道路沿いから見える同自治会館前にある花壇には案山子が。住民総出で作り上げています。
初年度は竹を使用した一般的な門松を製作しましたが、当地域の門松文化を調べ、今の形式となりました。