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門松づくり後の集合写真(令和4年12月)
(idea 2024年2月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。
行政区は田河津8区。42世帯121人(5班体制)が暮らす。7部会(総務、消防防災、生活環境、体育、史跡保存、地域づくり、納税貯蓄)に対し、自治会運営委員会(=役員)が各担当者(お世話係)として任命され、事業計画の立案、事業実施、各種団体との連絡調整を行っている。
平成18年に発足した矢の森自治会。各種団体の連絡調整機関として立ち上げると、納税組合を部会化し、翌年に「総務部」「消防防災部」「生活環境部」の3部会を、その翌年には「体育部」を設け、住民の文化・教養・健康を高める事業を展開してきました。それから14年を経た令和4年、地域の課題に向き合うため、2つの部会を新設したのです。
束稲山の麓に位置する矢ノ森集落には「矢ノ森八景(藤壺の滝、曽我寺址、八枚、湯場、九郎森、頼朝の墓、天皇様、切支丹処刑場)」と称す歴史的史跡があり、その維持管理をするため、「矢ノ森史跡保存会※1」が平成16年から活動していましたが、高齢化で保存会の機能が徐々に低下し、令和2年頃から「解散」の二文字が……。
そこで、自治会としてその機能を担うべく、自治会組織に矢ノ森史跡保存会を組み入れる形で「史跡保存部」を新設。東山町観光協会と協力(問合せ対応等は観光協会)しながら史跡保全をしています。
藤の花が咲く頃には、保存会の一大事業として「藤まつり」を開催していましたが、現在は保全活動のみに縮小。「自治会も少子高齢化で人口が少なくなってきているのが現状であり、それぞれの史跡の維持管理(環境整備や清掃等)で手一杯であることは事実。大きなイベントの開催は難しいが、維持管理を通して集落の歴史にみんなで関わるということは後世に繋げる継承の一つだと感じる」と自治会長の菅原理さんは語ります。
令和4年度に新設されたもう1つの部会「地域づくり部」は、「中山間集落機能強化加算事業」を実施するために設けた部会。同集落の「集落協定推進本部」から委託を受け、コミュニティサロンの実施や高齢者支援を行っています。
これは「将来的には矢ノ森集落一つではなく、もっと大きな単位で取り組むべきもの」という考えのもと、「そのために同部会が基盤づくりをしている段階」という位置づけです。
副会長の佐藤己義さんは、高齢化率50%超(令和5年3月末現在)となった同集落の一番の課題を「少子高齢化による高齢者世帯や一人暮らし高齢者の増加」とした上で、「子どもも子育て世代も少なくはなってきたが、いないわけではないので、史跡の保存と同様に集落全体で仕組みを作りその流れを次の世代に継承しつつ、常に課題と向き合うことも大切」と語ります。
令和5年度は合計8回のコミュニティサロンを実施したほか、高齢者等の自宅周辺除雪(依頼者5人)や一人暮らし高齢者の見守り活動(対象者5人)を行いました。菅原さんは、「時代背景に合わせ、組織の見直しを行いながら地域住民相互の親睦と連携を図ることが今後増々重要になってくるだろう」とこの先を見据えます。
現在自治会で管理している、「愛花夢館(アイカムカン)」は、自治会発足以前の平成9年に矢ノ森集落公民館として落成し、集落民から名称を公募。集落内各種団体の活動や住民交流の拠点として使用してきました。
3週に1回行う定期清掃は、4世帯ごとに班を作り輪番制で実施し、築26年経過した今でも、管理・整備が行き届いています。「この建物の自慢は、天皇様(集落にある神社。江戸期の創建で京都八坂より勧進したと伝わる)の参道に自生していた、ヤマボウシを和室の床柱としているところ。立派でしょ?」と2人でその柱を誇らしげに眺めます。
奥州藤原氏ゆかりの地として様々な史跡があり、保全活動のほか、集落全体で学ぶ機会(サロンでの学習会やパンフレットの作成など)を設けている同自治会。「昨年は、山形県鶴岡市の田川地区自治振興会有志(ぶら田川隊)が田河(田川)太郎行文ゆかりの史跡「曽我寺址」など史跡の見学や参拝に訪れ、情報交換等々の交流会を行った。集落にとっても地域の歴史を見つめ直すきっかけにも繋がった」と菅原さんは語り、「集落の交流拠点である愛花夢館で地域を超えた交流ができ本当に良かった」と佐藤さんも笑顔を見せます。
新年会(年祝い)等、コロナ禍で中止した事業の復活には難しい面もあるそうですが、反面、外部交流や史跡の学習・保存活動、支え合いの活動強化など、新たに自治会で整えた仕組みも。少子高齢化だからこそ必要な取り組みを、着実に進めています。
すがわら おさむ
菅原 理さん
6期11年目。国や市の動きを見ながら上手にその制度を自治会の機能に組み入れ「誰もが住みよい集落」になるよう努めています。
A.努力は決して裏切らない
さとう みよし
佐藤 己義さん
6期11年目。自然豊かで、歴史ロマンあふれる矢ノ森集落のために、仕事と両立しながら長きに渡り副会長として会長を支えてきました。
A.「自然の美」
毎年門松づくり教室を開催し、2年に1回は昔ながらの鳥居門松を継承しています。消防防災部の防火訓練も同時開催。
今年度は計8回開催。郷土の歴史を学ぶ学習や、輪投げ、屋内ゲートボール、健康体操など各回充実した内容を企画!
藤原秀衡公ゆかりの金山址である「藤壺の滝」も同自治会が管理。藤が咲きほこる前には住民らで藤棚の整備を行います。
矢ノ森八景を通して、地域外からの交流人口が増えることは住民の刺激にも繋がり、今後も大切にしていきたいことの一つ。