一関市花泉 大森集落(永井)

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花泉 大森集落(永井) 防除シートの釘止め作業の様子

防草シートの釘止め作業の様子

基本情報

(idea 2021年6月号掲載)※掲載当時と現在では情報が変わっている可能性があります。

 行政区「永井6区」は3つの集落公民館に分かれ、大森集落公民館はわずか14戸(うち2戸は厳密には集落外)と極めて小さい集落。花泉町内に水を供給する大森浄水場が大森地内にあり、間接的に水源を守っているということが集落の誇り。

「『やめる』という決断」から得られるもの

農村集落が立たされた大きな岐路

 道路沿いに防草シートが敷かれ、スッキリとキレイな沿道。その他の田畑周辺も刈払い等の管理が行き届き、いくつか点在する池の前には注意喚起の看板が設置されるなど、地域として環境整備に取り組んでいることが良く分かります。

 

 防草シートや同看板は営農組合の事業で設置しましたが、営農組合の活動は平成30年度で終了し、事実上解散。集落営農を目指し、多面的機能支払交付金(旧「農地・水保全管理支払」)を活用しての基盤づくりを進めていたそうですが、交付金に対応する事務作業を担う「次の世代」の参加を得られず、地域内でも「もういいべっちゃ」という声が出てきたことで、「交付金に頼らない」選択をしました。

 

 それまで事務作業を担っていた関正弘さんは「営農組合としての活動に呼びかけをしても、出てくるのは70~80代。高齢者層にだけ負担をかけ続けて良いのかと葛藤があった。そうした先輩方からも『事務作業の負担を続けさせるのも申し訳ない』と声をかけてもらって。本格的な営農組合として動いていくための入口だったはずが、正式な組織化をせぬままに挫折してしまったような状態です」と苦しい胸の内を明かします。

 

 交付金を活用しないことで事務作業等の負担はなくなりましたが、農地や水路等の維持管理は自己財源のみで賄っていかなければいけません。少子高齢化によるそうした課題に加え、移転による戸数減という現実とも向き合っている大森集落の営みを伺いました。

 

女性集落公民館長 連続選出に隠れた現実

 2期連続で女性が集落公民館長を務める同集落。同集落の慣例では世帯主が輪番制(主に年齢順)で集落公民館長を担ってきました。

 

 しかし、前館長の家では世帯主が他界し、その父親も高齢だったため、当時50代のお嫁さんが館長を務めました。現館長の小野寺茂子さんも、夫の慶亀さんが農家組合長の輪番と重なったことで、「80歳間近で2役は負担が大きい」と、茂子さんが館長を務めることに……。

 

 集落公民館としての活動は多くはないですが、行政区(永井6区)としての事業には館長・副館長が役員として参加するほか、大森集落では花壇整備を館長世帯が担う慣例があるなど、集落公民館長の役目は少なくありません。

 

 「花壇整備は『次の人のプレッシャーにならない程度に』とみんなで声をかけあっている」と笑顔を見せる茂子さんですが、「『大森なくなるんじゃない?』と言われるほど小さい集落なのに、他集落と同様に『一つの集落』として役員等を出さなければいけないことが辛い。規模が違う集落とは馴染めない話題もある」と、直面している課題も語ります。

 

 今では「山間部」に位置するように見える同集落ですが、実は「北上川のほとり」に集落が形成されています。昭和に入ると高台に移転する家が出始め、現在は「北上川上流狭隘地区」として治水事業(家屋移転)の対象へ。令和2年度は17戸でしたが、令和3年度には14戸に、うち2戸は集落外への移転ですが、移転後も集落公民館活動は同集落に所属する選択をしました。

 

 集落外へ移転後も同集落に所属することを決めた関茂子さんは「ただでさえ人口が少ない集落なのに、これ以上少なくなったら大変。集落活動も慣れたところの方が安心なので」と、その決断の背景を語ります。

 

なくしてはいけない「集落の営み」とは

 同集落の高台には、昭和59年に完成した「大森霊園」があります。昭和58年から先進地の研修や集落内での検討を重ね、当時の集落民全戸の協力の元、昭和59年に約3か月間をかけて造成、20基の墓地を整備しました。大森集落の歴史が読み取れる貴重な場所であり、集落として現在も環境整備など共同で管理を行っています。

 

 この墓地の管理費をはじめ、各種負担金を含めた年会費は、元旦に開催する総会の場で集金されます。総会の終了後には新年会を開催し、折詰等を食べながらの交流をしていましたが、コロナ禍で新年会は2年連続中止に。そして今年度の総会では「これを機に今後も中止にする」という決断をしました。「住民同士の交流の機会が減るのは寂しいけど、負担の方が大きくてね」と茂子さんは苦渋の決断を振り返ります。

 

 最低限の集落活動への取捨選択を図りながらも「集落としてなくしてはいけないもの」「集落として活動することの意義」を、同集落は考え続けています。

 

Q.集落の自慢は何ですか?

集落のこどもたち

花泉 大森集落 関栞奈(せきかんな)ちゃん& 快晟(かいせい)くん

せきかんな      かいせい

 関栞奈ちゃん& 快晟くん

 

 関正弘さんのお孫さん。3人兄弟の長女・栞奈ちゃんは永井小学校の5年生、次男の快晟くんは2歳。間もなく集落内に移転します

 

 

 

A.自然がいっぱい。空気がおいしい!!

花泉 大森集落 伊藤楓くん& 雪乃ちゃん

いとうかえで  ゆきの

伊藤楓くん&雪乃ちゃん

 

  集落公民館の事務局を担う伊藤忠志さんのお孫さん。楓くんは永井小学校2年生、雪乃ちゃんは5歳。関家のお孫さんとも仲良し!

 

 

 

A..みどりがいっぱい。


photo gallery

営農組合の記録

花泉 大森集落 活動がストップしてしまった営農組合。それでも集落の景観は保たれてます。

 残念ながら活動がストップしてしまった営農組合。それでも集落の景観は保たれており、その姿勢には感心させられます。

 

神様のお引越し

花泉 大森集落 道路改良の際に各所に点在していた神様(山の神や三峯山の石碑等)を集約。

 道路改良の際に各所に点在していた神様(山の神や三峯山の石碑等)を集約。集落として周辺の環境を整備しています。

 

沿道の防草シート

花泉 大森集落 営農組合で設置した防草シートは、集落公民館の事業で釘止め等の補修を行う

 営農組合で設置した防草シートは、集落公民館の事業で釘止め等の補修を行うことに。環境整備の負担減につながります。

 

高台にある大森霊園

花泉 大森集落 自分たちで山を切り拓いて整地した霊園。

 集落で造成実行委員会を組織し、自分たちで山を切り拓いて整地した霊園。集落民のつながりが感じられる明るい場所です。

 


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